「トラブルが不安」の声も。相乗りタクシーが日本の定番になる日

 

国土交通省は、昨年1月22日~3月11日に、大和自動車交通グループ及び日本交通グループと、配車アプリを使った相乗りタクシーの実証実験を行った。地域は、東京都23区と武三地区(武蔵野市、三鷹市)で、車両数は949台。

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同省自動車局旅客課によれば、実証実験実施期間中の相乗りタクシーの申し込み人数は5,036人で、そのうち利用者は494人。マッチングの成立率は約1割にとどまった。

しかしながらアンケートでは、利用者の約7割が本格導入後に「また利用したい」と回答した。つまり、マッチング率は極めて低いが、利用した人のリピート率は高かった。

実証実験に合わせて実施したインターネットモニターアンケートでは、相乗りタクシーを利用したくない理由には「相乗りする人がどういう人になるかわからないから」が最も多く、男性で6割、女性で7割を占めた。やはり、同乗者とのトラブルに巻き込まれる不安を拭い去れないのだ。

これは、ニアミーの現状の営業状況や長岡市での実証実験の中間報告と、ほぼ同じ傾向の結果である。

つまり、国土交通省の報告にあるように、実際の利用者には、複数人で相乗りして割安にタクシーを利用するという、相乗りタクシーのコンセプトは受け入れられたと考えられる。一方で、相乗りタクシーの課題として、申し込み人数の増加やマッチング効率を上げる工夫が必要なこと、同乗者への不安感が強いことから、これを解消する必要があることが浮かび上がった。

ちなみに、大和自動車交通と日本交通のアプリは、方式が少し違っていた。大和自動車交通は指定された停留所と行き先と乗車時刻を設定して、停留所まで来てもらう「この指とまれ方式」で同乗者を募集するやり方。日本交通は同じ方向へ行く人を途中で拾い、また降車させていく「フリーマッチング方式」で、利用者は助手席と後部座席に分けて座り定員を2人とした。

マッチング率には差が付き、大和自動車交通は60%、日本交通は5%だった。

いずれも料金の支払いはクレジットカードで、キャッシュレス推進の面もある。

シンガポールを本拠とする、「グラブ(Grab)」という配車アプリは、相乗り可能で現金払いもできる。グラブはマレーシアで起業。同国ではタクシーのぼったくりも珍しくなく、日本と違ってタクシー運転手があまり信用されていない。なので、採用面接と利用者のドライバー評価アンケートに力を割く、グラブの白タクのほうが、安全安心と思われている事情もある。現在、グラブはタクシーの配車も行う。

タクシー相乗りの導入を機に無理にキャッシュレスを推進しなくても、現金で払うのもありだろう。

前出、相互タクシー・小川社長は「東京のような大都市、長岡のような中都市、本当の田舎ではそれぞれタクシーのニーズが異なる。細かく対応していくことが重要」と指摘する。

たとえば東京都心部では人口が多いから相乗りのマッチングがしやすいので、自由マッチング方式。中都市や大都市でも郊外では、停留所を決めたオンデマンドの超小型バスのような方式が、自宅も特定されにくいので最適なのかもしれない。

本当の田舎は、タクシー会社も撤退している状況で、マッチング可能な人口もないので、相乗り以前に人口30万人以上の都市にしか認められていない個人タクシーの営業を解禁する、などといった議論が盛り上がってほしい。それも難しいなら、ウーバーのようなマイカーを活用するやり方しかないだろう。

Photo by: 長浜淳之介

長浜淳之介

プロフィール:長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)

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兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。共著に『図解ICタグビジネスのすべて』(日本能率協会マネジメントセンター)など。

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