2.何度言っても、言うことを聞かない
これは、1.が親の側の問題であることとの対比で言えば、子どもの側の問題ですね。ですが、案外とそうとも言いきれない面もあるのですよ。
2-1.言っている内容──「本当に言うべき内容か?」
まずは、子どもに言っている内容=子どもにやらせようとしていることを、再チェックしてみましょう。
- それは本当に、子どもがその子らしく育つために、必要なことでしょうか?
- それは絶対に、今日、いま、やらせるべきことでしょうか?
「食事中にトイレに立ってはいけない」
…ごもっとも。でも、そうしたマナーを習得すべき時期は、本当に今でしょうか?むしろ、食べ始めて胃腸の動きが活発になり、トイレに行くというのは、子どもにはよくある“自然なこと”では。
「洋服ダンスの中がぐちゃぐちゃ」
「オモチャ箱に何でも闇雲に放り込む」
…なるほど。この子はきっと将来、整頓されていない収納で苦労して、キレイに片付けることを学ぶのでしょうね。でもその“将来”がいつなのかは、子ども本人が決めること。今は(メチャクチャでも)タンス・箱に片付けたことを認めてあげてください。
すでに自分の中で「当たり前」と思って子どもに言っていることでも、改めて見直してみると「絶対に必要というほどではない」だったり、「全くこだわる必要がない」だったり、気付くものも多いはずです。
2-2.使っている表現──「子どもに理解できる言い方か?」
典型的な悪い例は、「ちゃんと」と「とにかく」。これが口癖の方は、要注意ですよ!「ちゃんと」の意味は「私から見て、充分に許容できる方法・品質であること」。その方法と品質については、実は何も説明していません。この言い方で子どもが「ちゃんと」できる可能性は、限りなくゼロに近いということ、心得ておきましょう。なので、「ちゃんと仕舞いなさい」はNG。
本当はイチイチここまで言わなくて良いのですが、対比のために言い換える例を挙げるなら、「1枚1枚、どのシャツか分かるように入れておくと、着替える時に見つけやすくて便利だよね」「大きいおもちゃは大きい箱に、小さいおもちゃはこっちの引き出しに入れておくと、使いたい時にすぐに見つかるよ」と、説明してあげる、ということになります。
「とにかく」の意味は「あなたには理解する必要も納得する必要もない。ただ命令に従え」。しかし、目の前にいる“子ども”というイキモノは、理解できて納得した時に、大きな行動力を発揮する性質を持っています。
「とにかく片付けて!」ではなく、「床におもちゃが転がっていると、パパ、踏んづけたら痛そうで心配だなぁ。おもちゃを壊してしまっても申し訳ないし。このおもちゃたちみんなを、自分の箱や引き出しに戻してあげられたら、次に使いたい時もすぐに見つかりそうで安心だなぁ」と言うと、おもちゃたちは足が生えたように、みんな自分の居場所に戻っていきますよ。
2-3.言っている場面──「子どもが受け取れる状況か?」
どんなに適切な内容を、分かりやすい表現で言ったとしても、子どものコンディションが悪ければ、言う通りには動けなくて当然です。分かりやすいのは、空腹・眠気・疲労。こんな時の子どもにとっては、片付けよりも、食事・睡眠・休息の方が圧倒的絶対的に重要なはず。前述の「食事中にトイレに立ってはいけない」を、子どもが食事中に立ち上がってから言うのは、この点からも不適切ですね。だって、もう差し迫ってますから(苦笑)。
言うのであれば食事の前に。「ご飯の途中にトイレに行くよりは、先に行っておいたほうがゆっくり食べられるね。それに手を洗うのも1回で済むし。さ、今のうちトイレ行っておこうか」
さて、皆さんに身近な状況・環境で、上記の「キレてしまう状況」に陥りやすい要素がいっぱいのものがあります。お分かりでしょうか?
答えは、「親子2人きり、家の中」。
- ずっと子どもと一緒で、距離が近い
→細かいことに気が付きやすく、気になりやすい
- 子どもの世話も、家事も
→余裕を失いやすい
- 自宅の中
→他人が交じって来れず、自分ひとりに全ての負荷がかかる。息抜きのタイミングがなく、「ま、そこまで言わなくてもいいか」「そんなにこだわらなくてもいいか」といった気分転換が難しい
この“要注意”環境に浸りすぎず、同時に仲間を作るためにも、可能な限り外に遊びに行ったり、お友だちを招いたり、お友だちの家に遊びに行ったりして過ごせるといいですね。読者の皆さんと、子どもたちが、お互いに機嫌よく楽しい時間を過ごせるよう、応援しています!
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