米・イラン間に浮上した直接対話の可能性と懸念増すサウジの出方

 

いろいろと調べてみると、米・イランともに、解決の糸口を必死に模索していることがわかります。1つは25日のイランのロウハニ大統領の一般討論演説の内容が非常にアメリカに対して厳しい内容であったにも拘らず、ハードライナーなはずのポンペオ国務長官が「本件については、緊張が高まる一方の現状を憂慮しており、特に偶発的な衝突が周辺国を巻き込んだ大戦争に発展することを懸念している。お互いの主張にまだ隔たりは大きいが、イランと交渉する機会を楽しみにしている」とソフトな“呼びかけ”を行い、イランサイドからの会談への働き掛けを待っているそぶりを見せています。

イランについては、すでに態度を軟化させていますが、その決め手は、長年の苦労の末、完成形を迎えているTeam Iran(ハーマネイ師、ロウハニ大統領、ザリフ外相)の交渉姿勢でしょう。それは、強硬姿勢を貫くが、交渉カードを豊富に抱え、常に“次善策”を何パターンも用意して、じわじわと相手の頑なな要望を取り入れつつ、自らが設定した絶対的な目的は必ず実現させる交渉術です。この“ペルシャ流交渉術”、実は私も大いに参考にしています。

その“ペルシャ流交渉術”の甲斐あってか、諸説ありますが、緊張緩和の機会が見当たらないとされる極限の状況下において、トランプ大統領から「新しいディールを目指すことを視野に」という言質を引き出したのは、Team Iranによる交渉の“勝利”でしょう。

そして、この交渉術、日本やフランスという“仲介役”を買って出る国々を、様々な障害物を次から次へと作り出しつつ、巧みに操り、利用して、“ほしいものを必ず手に入れる”ものと言えるでしょう。

少し余談になりますが、同じく国際社会に緊張を与えている北朝鮮情勢とは質が異なります。イラン情勢には、イランの鉄壁のトライアングルTeam Iranによる外交交渉戦術が存在しますが、北朝鮮の場合は、そのような確立されたシステムは存在せず、あくまでも金正恩氏のワンマンとその場の判断次第の交渉ですので、もしかしたら、イラン情勢よりも大きなブレークスルーも起こりやすいかもしれませんし、逆に壊滅的な結果を招く危険性もはらんでいます。ゆえに、こちらについては、交渉の行方をしっかりと追うとともに、可能な限り、交渉プロセスに対して何らかの影響を与えていく努力をしていくことが必要だと考えます。

話をイラン、そして中東地域に戻すと、やはり現時点で無視できないのは、9月14日の事件の“被害者”であり、長年、イランとライバル関係を続けているサウジアラビアの出方でしょう。実際に攻撃を実行した主体(主犯)が誰かはおそらく明らかにはならないと思いますが、今後、9月14日の出来事を踏まえて、サウジアラビアがどのような動きに出てくるかは注目です。

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