今やすっかり「自作ではなく購入」が当たり前となった観のあるおせち料理。何かと忙しい現代社会において、かかる手間を考えれば当然の流れと考えられます。しかし、その「おせちを買う」という選択が日本経済に対する打撃になるとするのは、繁盛戦略コンサルタントの佐藤きよあきさん。佐藤さんは今回、自身の無料メルマガ『繁盛戦略企画塾・『心のマーケティング』講座』にその理由を記しています。
おせち料理が売れるほど、おせち文化は衰退する!?
おせち料理の予約が、もう始まっています。百貨店では、料亭のおせちが。スーパーでは、プライベートブランドが。飲食店でも、オリジナルおせちに力を入れています。数千円の安価なものから、5万10万の高級品まで。和・洋・中・アジアンなど、さまざまな種類があり、好みに合わせて選べます。
おせちを手づくりするのは、手間が掛かります。大量の買い出しと時間の掛かる調理に、主婦は疲れ果ててしまいます。「気ぜわしい大晦日に、なぜこんなことを?」と、ふと疑問を持ってしまうことも。その結果が、「おせち料理を買う」という選択になるのです。現代人に、おせち料理を作るという行為は、合わないのかもしれません。おせちを注文して、ゆっくりと過ごす。時間を重視する現代人には、その方が良いのでしょう。
我が家では、結婚以来夫婦ふたりでおせちを作り続けています。しかし、十数年前「面倒だから、やめようか」と、話したことがありました。その時、まだ小学生だった息子に聞いてみました。「おせちが無いと淋しいか?」。当然のことですが、「やっぱり無いと淋しい」という答えが。そこで、買おうとはならなかったのです。価格の問題もありますが、息子が求めているのは、「我が家のおせち」であることに気づいたからです。豪華なものなど何も入っていませんが、親が手間ひま掛けて作るおせちを美味しいと感じているのです。この習慣をやめてしまうわけにはいかないのです。なので、作り続けています。
おせちとは、本来そうした存在ではないでしょうか。家庭の味、地方の味。日本の食文化における、大切なひとコマです。これをプロに頼ってしまって良いものでしょうか。買うということは、他人の家庭と同じものを食べることになります。日本中で同じものになることもあります。親の味も家庭の味も何もない。これは、食文化とは言えません。「買うおせち」が広まることは、決して良いことではありません。
では、経済面から考えてみると……。
高いおせちをみんなが買えば、動くお金は大きくなります。しかし、おせちを手づくりするために、これまで買われてきた食材が、売れなくなってしまいます。正月ということで、必要以上に買っているので、その額は非常に大きいものです。
さらに、おせちに飽きた後には、鍋物や焼肉をする家庭が多いので、その分の食材も売れていました。ところが、おせちに大金を遣ってしまうと、その後は節約することになるので、食材が売れなくなるのです。
おせちが売れるか、食材が売れるかを比べると、経済的には後者の方が波及効果は大きいと言えます。すなわち、おせちが売れるということは、日本の文化が失われると同時に、経済的な打撃も大きくなるということです。
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