ここで実務上、気を付けるべきことが3点あります。まず1点目が「就業規則(もしくは給与規程等)に交通費の定義をきちんと規定する」です。
交通費は法律上、支払が義務付けられているものではありません(規定や雇用契約で定めている場合はもちろん支払う義務はありますが)。よって法律の決まりが無い分、細かく規定を定める必要があるのです。例えば「交通費は最も経済的な順路および方法によって計算する」という規定が無いと経路が複数あった場合に一番高い経路で申請されても拒否することができません。
2点目が「自宅の確認の方法を決める」です。実際に住んでいるところより遠くを自宅として申請し不正に多く交通費をもらう、というのは普通によくある話です。免許証や住民票、もしくは購入した定期などのコピーを添付してもらうなどをして自宅を確認するようにしましょう。
最後の3点目が「現状の働き方にあった交通費の支給方法を決める」です。今回の裁判例の問題点は「2ヵ所から通勤することをそもそも(学校法人が)想定をしていなかった」ことのように感じます(この先生が初めから悪意にもって不正受給しようとしていたとはちょっと考えにくいですね)。
おそらくみなさんの会社もそうだと思いますが「自宅の住所が変更になった場合はすみやかに申請すること」という規定はあるでしょう。ただ、それだと今回の裁判のような例に対応ができません。厳密には元の家にも住んでいるため「自宅の住所の変更」にはあたらないとも言えるからです。
実際に介護人口も増えていますし例えば、曜日によって介護のために自宅に帰って、そこから通勤するなどの「2ヵ所通勤」も今後は増える可能性があります。このような働き方にも対応した規定を作る必要があるのです。
もちろん確認するにも規定を作るにも限界はあります。自宅を住民票や免許証で確認するといっても住所を移していない人も多いですし定期券は1回買ってから払い戻しをすることも出来ますので必ずしも証明にはなりません。ただ、ある程度の規定を作っておかないと万が一、不正が発覚した場合もそれを正すことができません。
みなさんの会社の交通費規程はいかがでしょうか。
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