倒れた電柱2000本。疲弊した日本のインフラが「次の危機」を招く

2019.10.31
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携帯も無線ネットもたちまち断絶

固定電話が停電と共に使えなくなるのは当然として、そういう時こそ威力を発揮するはずの携帯電話や無線ネットも、使えるのは停電後24時間で、その後はプツンと切れて何日間も通じない。我が家の場合は15号で6日間、19号で3日間ダメだった。調べてみると全国に携帯基地局は約74万局あり、そのうち24時間のバックアップ電源を持つのはわずか5,800局のみで、自治体の災害対応の施設が中心。その他は数時間程度のバッテリーしか備えていない

つまり停電は起きても数時間、最大でも丸1日中には復旧するという想定で予備電源を考えていたわけで、これではまったく役に立たないことが今回判明した。総務省は、自治体施設だけでなく病院や避難所となる建物などに長時間電源を用意するよう携帯各社に求めていく方針という(10/18読売)が、そんなふうに少し範囲を広げたくらいでは話にならない。例えば、我が家の近所では、東北電力から駆けつけた応援部隊が山間の道に入っても倒木があって通れないのだが、本部に電話をして指示を仰ぐことができず、そのまま引き返していくといったことが起きていた。これが停電の復旧を大きく遅らせる要因となったことを思うと、すべての基地局の予備電源を強化して、災害の時こそ携帯に頼れるようにして国民の安心を保証すべきだろう。

ちなみに、県と市町村がいざという時に連絡を取り合うための独自回路である「防災無線システム」も停電で作動せず、これよりも携帯基地局の強靱化を進める方が遙かに意味がある

電気が来ないと水も止まる。大元の給水場で加圧ポンプが動かず、またそうでないところでも中継ポンプ場が動かず、思いのほか広域で断水が続いた。電力を用いて配水する施設は全国に1万745カ所でそのうち62%=6,693は自家発電設備を持っていない。おまけに、これまた40年の法定耐用年限を過ぎた水道管が増え続け、特に地震には脆弱になっているが、全国1,263の水道団体の3分の11=419は赤字で、改修する体力がない。政府の対応はインチキで、この10月施行の改正水道法で「民間委託」を推進するとしている。

ほかにも電気が来ないと動かないものがたくさんあって、信号が点かないので道路が渋滞し、事故も起こりやすい。高速道は、風も雨も止んだのに何日も閉鎖が続き、なぜかと思えば、自家発電を持たないのでゲートが開かずETCカードが読み取れず電光指示板は表示できずトンネルのランプも点かないので車を通せない。

ガソリンスタンドも非常用電源を持つところだけが給油していて、そこに車の長蛇の列ができた。コンビニやスーパーも、品物があってもレジが動かないので、電卓で計算して現金で収受していた。キャッシュレス化がトレンドだと言って政府も旗を振るが、電気が来なければそれも無理ということになる。

このようにして、道路も橋もトンネルも、堤防も水門も港湾岸壁も、何もかもが40~50年を過ぎて行こうとしているのが今で、それをインフラの全般的危機と捉えて立て直す総合戦略が必要である。内閣官房HPには「国土強靱化」の特集ページがあるが、それは全身が衰弱に向かっている高齢者に部分的な筋肉トレーニングを勧めているかのようなチグハグなもので、戦略の体をなしていない。政府がこのように怠慢であることに野党もメディアも怒り、対案を立てて迫るべきである。

image by: 陸上自衛隊 東部方面隊 - Home | Facebook

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早稲田大学文学部卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。現在は半農半ジャーナリストとしてとして活動中。メルマガを読めば日本の置かれている立場が一目瞭然、今なすべきことが見えてくる。

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