「台湾は中国の一部」とフェイク画像を垂れ流す台湾メディアの怪

2019.11.11
 

「親中派」の立候補者に関するニュースを大量に流す確信犯

それが、2020年におこなわれる中華民国(台湾)総統選挙に、親中派の最大野党「中国国民党」から公認を受けて立候補している韓國瑜(カン・コクユ)現・高雄市長に関する報道だ。下記の現地ニュースサイトを見ると、露骨な偏向報道の実態が浮かび上がってくる。

● 罰百萬沒在怕!中天繼昨天狂播韓國瑜 今早再高達六成三(現地ニュースサイト)

2019年3月27日、同ニュースは韓氏に関するニュースのテロップをたった5分間で20種類も流したという。このテレビ局が「親中派」であることは台湾人であれば常識だが、それにしても、いち市長に関するテロップをわざわざニュース専門番組で5分間に20個も流す必要があるだろうか? 中には「朝、韓氏が◯◯を食べた」「昔はこれだけ髪の毛が生えていた」など、どうでもいいニュースも多く含まれていた。これを見た台湾人の間からは「サブリミナル効果を狙っている」「洗脳だ」という指摘が少なからず挙がっていたという。実際のテレビ画面についてはリンク先をぜひ見て欲しい。

マンガ「洗脳」

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illustration by: kouikusen

なぜ「中天ニュース」は、ここまで「親中」なのか?

では、なぜこのテレビ局はここまで「親中ニュースばかり報道するのか? そのヒントは経営母体である「旺旺グループ」の沿革にあった。

旺旺グループは、台湾から中国大陸に進出した1962年設立の老舗総合食品メーカー「中国旺旺控股有限公司」と上記のマスメディア事業などを統括する「神旺控股有限公司」で構成された企業グループ。創業当初は台湾の宜蘭県で主に農産物・水産物の缶詰加工品の輸出を行っていたという。現在の同グループ経営者で「台湾一の富豪」として知られる蔡衍明氏がトップに就いたのは1977年のことだ。2年後の1979年には、あの時報広場ビルにも大きく掲げられていた「旺仔(旺旺坊や)」が誕生し、自社ブランドを確立したという。

大きな転機は1983年、日本の岩塚製菓株式会社と技術提携し、台湾にて米菓(煎餅)の製造販売を開始したことだ。その後、短期間で台湾の米菓市場をリード。1989年には、台湾企業として初めて中国大陸で商標登録を実現し、「旺旺」ブランドの登録を完了した。さらに1992年、中国・湖南省に現地法人「湖南旺旺食品有限公司」を設立し、旺旺グループが中国大陸市場へ進出するための堅実な基盤を構築。現在も中国大陸で積極的に事業を展開し、煎餅などの菓子類を中心に、飲料から乳幼児向けの食品までを手がける大企業に成長した。台湾一の富豪となった蔡衍明氏が「親中たる所以である。

さらに旺旺グループは2008年11月、新聞社やテレビ局などを所有する台湾のメディアグループ中時集団を買収し、蔡衍明氏が大手紙『中國時報』やテレビ局「中国電視」「中天電視」のオーナーに就任。すでに中国寄りだったメディアグループを丸ごと買収したことで、旺旺グループが台湾の親中派メディアを掌握した形となった。

この買収劇には台湾人も危機感を覚え、2012年には学生らによる反対運動反媒體壟斷運動」が勃発。中国寄りメディアが台湾で強大化することに若者たちは強く反発した。現在も旺旺グループの「台湾は中国の一部」という報道姿勢は変わらず、来年1月の総統選を前に「親中工作」は今以上に激しさを増す可能性がある。

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