もはや笑うしかない。日本の生産性をダメダメにした5つの大問題

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前回、「日本経済をスカスカにした真犯人、日本発『多国籍企業』の罪と罰」で、「2つの日本経済の分裂」に我が国の空洞化の原因を求めた、米国在住の作家・冷泉彰彦さん。さらに冷泉さんは今回、自身のメルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』で、先進国の中で最低にまで沈んだ日本の生産性再浮上を阻む「5つの問題点」の存在を指摘しています。

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日本の生産性はスカスカ 日本的空洞化の研究その2

日本生産性本部という団体があります。正直に毎年「労働生産性の国際比較」を公表しており、2018年12月には「日本の時間当たり労働生産性は47.5ドル(4,733円)、OECD加盟36カ国中20位」などというプレスリリースを出しています。今年もそろそろ2019年の分を出すのだと思いますが、とりあえずこの2018年バージョンを見てみると、

2017年の日本の1人当たり労働生産性(就業者1人当たり付加価値)は、84,027ドル(837万円)。ニュージーランド(76,105ドル/758万円)を上回るものの、英国(89,674ドル/893万円)やカナダ(93,093ドル/927万円)といった国をやや下回る水準で、順位でみるとOECD加盟36カ国中21位となっている。

などという悲惨なデータが臆面もなく書かれています。こんな悲惨な内容なのに、生産性本部などという名称を変えることなく毎年公表しているというのは、不思議な感じがします。

多分、日本の製造業が絶好調で「経済大国」と言われていた1980年代に「日本の生産性も世界一」だということでこうした団体の啓蒙活動がされていたわけですが、「その時で時間がフリーズ」しているのだと思います。男性中心の終身雇用労働者が会議をしたり、手帳に何かを書き込んだりして集団主義を実践すれば、世界一の生産性が達成できた、そんな意識です。

でも、90年代以降の結果はダメダメで先進国中最低になっているわけです。

生産性本部にも、優秀な方、誠実な方もおられると思うし、昭和世代の自分には世代的に責任の一端があると思うと心苦しい面もあるのですが、こうなると悲劇より悲惨な喜劇としか言いようがないのも事実です。

どうしてなのでしょうか?とにかく生産性が低いということは、働いても働いても「付加価値=カネ」が稼げないということです。企業活動としてカネが稼げないということは、その結果として給料という形での報酬も得られないことになります。また、頑張って働いてもムダということで、労働の社会貢献という意味でも成果はスカスカということです。

本当にイヤになってしまうような話ですが、では、どうして日本の生産性はこんなに低いのでしょうか?

まず、コンピュータの利用が進んでいない、文書が多い、原本を作ってハンコを押すといった旧態依然とした事務仕事の問題があります。しかし、この部分は遅まきながら、少しずつ改革が進んでいるのも事実です。対面型コミュニケーションが主流というのも問題ですが、これも多少は理解がされているようです。

ですが、その他にもっと根深い問題があることについては、まだまだ認識が共有化されていないようです。今回は5つ問題提起したいと思います。

1つ目は、仕事が専門化されていないということです。例えば経理部門、マーケティング部門などの職能については、仮に専門化していれば、まず最先端を大学や大学院で学んだ人材、より規模の大きなグローバル企業でバリバリだった人材というのは「スキルの訓練ができている即戦力」になるはずです。

ところが、仕事が専門化されていない人事をするために、せっかくマーケティングができるようになっても、今度は現場とか、生産管理の次は営業とか、無茶な回し方をするわけです。昭和の時代ならいざ知らず、そうした個々の専門職については、現代ではグローバルな標準化がどんどん進んでいるわけで、学ぶ内容は格段に深く広くなっています。

にも関わらず、人事ローテをするのは無駄です。その結果としてせっかく身についたノウハウを捨てることになるし、部門や職能を変わるたびに大変な思いをしてトレーニングをしなくてはならないからです。

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