「地獄の研修」自体は違法ではない?それでも会社が敗訴した理由

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団結力強化などの名目で、業務とは無関係の登山など「厳しい研修」をあえて行う企業は一定数存在しますが、では、こうした会社は、社員の安全面にどう配慮しているのでしょうか。今回の無料メルマガ『「黒い会社を白くする!」ゼッピン労務管理』では著者で特定社会保険労務士の小林一石さんが、研修中の事故で後遺症を負った社員の裁判結果と「意外な判決理由」を紹介するとともに、研修で留意すべき重要な視点を記しています。

「地獄の研修で障害が残った」会社は責任を問われるのか

以前、会社の人事を担当していた頃に「富士山登頂研修」という提案を、研修会社の担当の人からされたことがありました。新卒の社員を対象にした研修で5、6人ずつのグループを作り、全員で富士山の頂上を目指すという研修です。

一緒に困難に立ち向かい、その困難を乗り越えることでチームとしての団結力が強まるというどこかワンピース的なともすれば根性論的な内容でした。その効果については正直、私も半信半疑でしたが結構な人気だそうで、リピートする会社も多いとのことでした(もちろん営業の人ですからそう言うに決まっていますが)。

結局、その研修は行いませんでしたので実際にどれくらいの効果があるのかはわかりませんが、そういう厳しい研修をやらせたい!という会社が一定数あるのは何となくわかる気がします。ただ、そういう厳しい研修には法律的なリスクもあります。

それについて裁判があります。

ある業務用機器製造の会社で新人研修に参加した社員が、その研修での怪我が原因で障害が残ったとして会社を訴えました。その研修は「地獄の研修」とも呼ばれ「あきらめない、最後までやり通す社員の養成を目的とした結構厳しい内容でした(「地獄の研修」と言うくらいですからね)。

具体的には「24キロを制限時間5時間で歩く」という訓練で、完歩しないと正社員になれないと研修の講師からは言われていたそうです。この社員は歩行中に足首をひねって転倒し、それが原因で足に後遺障害が残ってしまったのです。

と、ここまでで、いかがでしょうか。なんとなく濃いブラック臭が感じられるかも知れません。

ではこの裁判がどうなったか?

これは言うまでもなくおそらくみなさんもとても簡単に想像がつくと思いますが、一応、お伝えすると会社が負けました。裁判所は「会社に安全配慮義務違反があった」として、賠償を命じたのです。

ただ、です。

「こんなことさせていたら裁判で負けるのも当り前」と考える人もいるかも知れませんが、そこは注意が必要な点が1つあります。それは、

  • 研修で長距離を歩かせた
  • その途中で怪我をした
  • その怪我が原因で後遺障害が残った

から、会社が負けたわけではないのです。どういうことか。具体的には裁判所は以下のように判断しました。

  • 研修への参加者の年齢が幅広く、体力にも大きな差があるにもかかわらず個人差や運動経験の有無等に全く配慮していない
  • 足首を痛めた社員が、歩行訓練の中断や病院への受診を求めても、これを拒絶して歩行訓練を継続した

つまり、その怪我に対して事前、事後の対応に問題不備があったから、会社が負けたのです。これは実務的にも非常に大切なポイントです。

みなさんの会社でもいろいろな研修を行っていると思いますが、場合によっては少々厳しめのトーンで行う研修もあるでしょう。もしかすると今回の裁判例のような(ここまで極端でないにしろ)研修を行っている会社もあるかも知れません。ただ、それ自体が即問題になるというわけではないのです。

今回の裁判でも、「あきらめない、最後までやり通す社員の養成」という研修目的自体は問題無しと認められています。また、今回の裁判例とは別ですが厳しい訓練中に社員が死亡し会社が訴えられたという裁判では「会社の対応には問題は無かった」とされたものもあります。

厳しい研修を積極的に推奨するわけではありませんがもし必要なのであればやるべきでしょう。ただその際は万が一の場合も想定し、なおかつ万が一が起こった場合の対応も的確に行う必要があります。厳しさの中にも安全管理という視点が重要なのです。

image by: Shutterstock.com

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【社員10人の会社を3年で100人にする成長型労務管理】 社員300名の中小企業での人事担当10年、現在は特定社会保険労務士として活動する筆者が労務管理のコツを「わかりやすさ」を重視してお伝えいたします。 その知識を「知っているだけ」で防げる労務トラブルはたくさんあります。逆に「知らなかった」だけで、容易に防げたはずの労務トラブルを発生させてしまうこともあります。 法律論だけでも建前論だけでもない、実務にそった内容のメルマガです。

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【著者】 特定社会保険労務士 小林一石 【発行周期】 ほぼ週刊

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