環境問題を考えて見えてきた高齢者が構築すべき「消費スタイル」

 

3.成長段階と環境保護

人類の歴史は、貧しい時代からスタートして、次第に産業が発展し、人々の生活も向上してきた。人口が少なかった頃は、自然が持つ浄化機能で十分だった。環境問題は存在しなかったのだ。

世界は同時に発展したわけではない。最初に発展した先進国で環境問題が発生し、次第に新興工業国にも拡大していく。やがて、環境問題は地域的な問題から地球規模の問題に変化していった。

どの地域も、最初に経済発展を目指し、経済発展の結果、環境問題が起きる。そして、環境問題への取り組みも、経済発展の段階によって異なる。従って、先進国と新興国を同じ基準で環境保護を強制するのは難しい。しかし、既に環境問題は地球規模に達しており、猶予はできない。

我々は今、ここにいる。問題は分かっている。しかし、解決策は難しい。経済成長も捨てることはできない。しかし、このまま突き進めば、人類全体の生存が危うい。そして、経済格差が進み、貧困が増える中で、我々個人は自分の生活を守らなければならない。その時に環境問題を考える余裕はあるだろうか。

4.我々が目指すべき生き方

個人の生活で環境を考える場合、なるべく資源やエネルギーを使わず、格差が広がらないような生活を心がけることだろう。例えば、大量生産大量販売システムから外れる。大量生産大量販売が可能なのは、資本力のある大企業である。この仕組みに飲み込まれると、大企業だけが繁栄し、中小企業や零細企業は淘汰される。そして格差が拡大する。

大手スーパーよりも、地元の商店を選ぶ。大手スーパーでも、産直の商品を選ぶ。気を付けたいのは、品質が良くて安い商品という理由で、商品を選ばないことだ。むしろ、外見よりも中身を重視する。大きさや形が不揃いだったり、色づきが悪くても、味や栄養が同じならば、それらを食べるようにしたい。廃棄されるリスクを考えるならば、賞味期限に近いものを選ぶことも重要だ。必要以上に新しいものを選ぶことは、結果的に廃棄物を増やすことになる。

社会活動、ボランティア活動、社会的な企業に参加する。あるいは、環境や人権を守る企業を支持すること。買い物というのは、所有するための手段だけでなく、企業を評価する行動であることを認識したい。

身の丈に合った生活スタイルを確立する。なるべく資源を使わずにスケールダウンした生活を心がける。余分なモノは買わないし、買ったものは長く使う。最近流行している断捨離の精神も重要だ。プライスレスなモノやコトを大切にする。貨幣経済に依存した楽しみではなく、内面を豊かにすることを考える。

こうした生活スタイルは、若者よりも高齢者に向いているだろう。今後の時代は、高齢者が新たな消費スタイルを構築していくべきである。効率より真の豊かさと個人の幸福を優先したい。

■編集後記「締めの都々逸」

「良くて安いは どこかが無理よ 良けりゃ 高くも買っとくれ」

「お客様は神様」という教えは、サスティナブルではありません。お客様が暴君になれば、販売員たちは滅びてしまいます。お客は神様ではありません。お金を払うのは、それに見合うだけの商品を受け取るためです。商品を受け取らずにお金を払えば神様と認定しても良いのですが。

売る方と買う方は対等だと思います。どちらかが威張るというのがおかしい。偉そうな寿司屋も嫌いですが、変に通ぶってうるさい客も嫌いです。互いに謙虚にいきましょうよ。それが世界に平和を招きます。(坂口昌章)

image by: Shutterstock

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