従業員との信頼関係ができていない会社が3月末退職に苦しむ理由

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3月決算が多い日本の会社。そろそろ年度末を迎え、社内がバタバタし始める時期ではないでしょうか? 決算準備で忙しいこの時期、実は希望退職者が多く発生する月でもあるのだそうです。しかも有給休暇の消化で3月は出社ナシ…という場合も多いといいますから、企業にとってはたまったものではありません。そんな状況を避けるために、何ができるのでしょうか?無料メルマガ『採用から退社まで! 正しい労務管理で、運命の出会いを引き寄せろ』の著者・飯田弘和さんが普段の従業員との信頼関係が大切とし、その理由を語っています。

年度末の退職者

年度の替わるこの時期は、退職者が多く発生する時期でもある。この時期の退職には、労働者からの希望退職が多い。解雇や退職勧奨などはそれ程多くはない。この時期に希望退職が増えるのは、この時期に労働者の流動性が高まるからでしょう。多くの人が、この時期に辞め、多くの会社で中途採用が活発に行われる。転職のチャンスが多く訪れることになる。

会社はある程度、この時期に退職する労働者数を見越しておく必要がある。これを見誤ると、人材不足により、4月からの事業活動に支障をきたすことになる。

また、3月末で退職する者の中には、出社は2月末まで、3月はすべて年休消化という者も多い。普段から会社が年休取得を奨励していないと、たまっている年休を退職時にまとめて取得されることになる。3月末での退職者が多い事業所は、3月に実際に働いてくれる労働者が少なくなることになる。残った労働者は当然疲弊する。ただでさえ年度末は忙しい。そのうえ人手不足ではたまったものではない。

そして、年休をなかなか使えない事業所の場合、退職者の多くは、年休消化に入るギリギリで退職を申し出る傾向がある。早めに退職と年休取得を申し出た場合、このような会社では、大変居心地の悪い思いをする。場合によっては、上司や社長からいじめ・嫌がらせを受けることになる。退職や年休取得への妨害行為を受けることもある。だから、2月の末に、3月いっぱいでの退職と3月中の年休取得を突然申し出られる。年休残が多い人の場合、まるまる2か月間を年休消化に充てることもある。

このような場合でも、会社は、年休取得を断ることはできない。取得を認めなければならない。年休取得は、労基法で認められた労働者の権利だからである。会社には時季変更権が認められているが、労働者が退職してしまうので、別の日に年休を取る余地がない。であれば、会社の時季変更権は認められず、労働者の年休取得の権利が勝つことになる。

普段から年休の取りやすい職場にすることで、退職時にまとめて年休を取得することを防ぐことができる。職場のコミュニケーションを活発にすることで、できるだけ早く退職の希望を伝えてもらえる雰囲気を作るよう心掛けよう。それによって、新たな人材の獲得にいち早く取り組めたり、引継ぎがしっかり行える。場合によっては、労働条件の見直しによって退職を留まってもらうなどの対応が必要となることもある。

また、退職時の年休取得を最小限に控えてもらい、使いきれなかった年休は会社が買い取ることを退職者と合意することで、会社への影響を最小限に抑えるような対応が必要かもしれない。ただし、これは、退職者と会社にしっかりとした信頼関係が築かれていないと上手くいかない。普段からの、従業員に対する態度・対応がカギとなる。従業員を大切にしていない会社は、こういったときに足元をすくわれることになる。

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【著者】 飯田 弘和 【発行周期】 週刊

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