今の日本は原発の時と同じです。情報が透明化されることもなく、相互作用のプロセスも徹底されないまま、「今は踏ん張りどき!」「一致団結しよう!」などと精神論に終始している。世界から批判されて当然です。
ひょっとするとお偉い人たちは、「オリンピックの開催中止の可能性」を議論の俎上にのせると、「そんなことになったら借金ばっかり残って経済が大変なことになるぞ!」「そんなことになったらますます景気が冷え込んで、どうしようもなくなるぞ!」と、パニックを恐れているのかもしれません。
しかしながら、人間はそう簡単にはパニックにならない。リスクを正直に言うことで、好意的かつ冷静に対処するという人間の行動特性が引き出されることがわかっているのです。
危機管理の専門家である米国の社会学者ミレッティらは「情報提供者が陥る誤解」を次のように説明しています。
- 誤解その1:人々はパニックを起こす
パニックは映画のプロデューサーが作り出した幻想。 - 誤解その2:警告は短くすべし
緊急時ほど詳しい具体的なメッセージが必要。 - 誤解その3:誤報にならないように慎重に
たとえ結果的に誤報となったとしても、その情報が問題となることはない。誤報を恐れず、すべての情報を即座に開示せよ。 - 誤解その4:情報源は1つにすべし
危機に面した人は様々な情報源を求める。多様な情報源からの一貫した情報を得ることで、緊急事態の意味と、その内容を信じるようになる。 - 誤解その5:人々は即座に防衛行動に出る
情報が持つ正確な意味が分かるまで、人は具体的な行動は起こさない。
とここまで書いていたら「IOCが5月までに東京オリンピックの開催の有無を決めると発表した」というニュースが飛び込んできました。
さて、…どうなることやら。
みなさんのご意見もお聞かせください。
image by: 首相官邸
※本記事は有料メルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』2020年2月26日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。
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