追い詰められた首都。東京は本当にロックダウンすべきなのか?

 

これに加えて、環境によってもR0は変化します。まだコロナに感染していない人が、ある期間(例えば1ヶ月間)、絶対に玄関から出ず、また玄関も開けずに一切の「人との接触」を絶ち、冷蔵庫と戸棚にある食品だけで生き延び、配達された郵便物にも触れないということをしていれば、R0はほとんどゼロになります。

反対に、閉ざされたクルーズ船で対策が不十分だと6とか8、ライブハウスでは4とか6とか、今回の小池知事が注意喚起したナイトクラブでは5とか7とか(あくまで全くの仮の数字ですが)いう形で、同じ新型コロナウイルスであっても、R0は大きくなります。都市の場合なら、都市閉鎖(ロックダウン)をするのは、このR0を意図的に減らすための政策です。

つまり、世界中の国または都市がロックダウンをするのは、この「R0」を1より小さくすることに全力を挙げているわけです。中国湖北省の武漢市は、それを達成したことで第一次感染をおおむね収束させることができました。

具体的には、各国において感染症の専門家は「q(接触を減少させる目標値)」の数字を動かすことで、何とか「R0」が1より小さくなるようにシミュレーションを行っているわけです。

例えば、これもあくまで単純化した話ですが、最初に申し上げた「強制レベル大」という場合は、qの目標値が「0.03(3%)」以下になるようです。例えばフランスの場合、外出には「外出目的申告書」を携帯させるとか、散歩やジョギングは自宅から半径500メートル以内といった規制をしていますが、そうした規制によって、q=0.018(1.8%)ぐらいを目指しているようです。

また中国の武漢市の場合は、感染がピークとなった時期には「外出は1家族1人が1週間に1回」というような厳しい規制があったようで、しかも警察による取締や罰則の適用を伴うものでした。これは共産党政権だからできるとか、民主国家ではできないとかいった問題ではなく、武漢市の、その時の状況では「q=0.01(1%)以下」にしないと、R0(感染率)を1未満にはできない、そのような切羽詰まった状況があったということです。

一方で、アメリカの場合は「都市閉鎖「q=0.18(18%)」ぐらいをターゲットにして、日々の状況に基づいて国や州、都市が様々な規制をかけています。例えば、私の住むニュージャージーの場合は、まずレストランやバーが休業命令の対象となり、その数日後にヘアサロンなどパーソナルケアの店舗に休業命令が出されましたが、別に思いつきでやっているのではなく、感染の状況を見ながら「q」の目標値をどんどん下げているわけです。

ニューヨークの場合は、罰則規定が導入されていて、公共空間での集合や禁止行動(バスケットボールなど)を行った場合は、250ドルから500ドルの罰金とされていますが、そうした罰則の設定や罰金の金額も「q」の数字を下げる努力としてされているのです。

ところで「R0(感染率)」と「q(減少目標値)」の関係ですが、勿論、その都市や地域の人口、そして感染者数も関係してきます。例えば、人口の割に感染者が多く、現在の感染率「R0」も高い場合は大変に危険ですから、「q」を思い切り小さく取って、それこそ3%とか1%を目標にしなくてはならなくなります。

一方で、人口の割に感染者が少ない場合は、「q」をそれほどムリに小さくしなくても、「R0」を1未満にして収束に向かわせることが可能になります。反対に、ある都市の全体として「R0=2」とかになると大変です。感染サイクルを7日間としても、14日で4倍、21日で8倍、28日で16倍と倍々ゲームで増えていってしまうからです。更に2.5から3に近づくと、もっと激しい感染爆発になります。

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