新型コロナの裏で世界を脅威に陥れている「もう一つのウイルス」

 

そしてこれらによく似た状況は、日本が位置するアジア・太平洋地域でも顕著化しています。通常、このエリアはアメリカの第4艦隊と第7艦隊にがっちりとホールドされ、日米韓の強い同盟関係の下、中国の勢力と対峙する形で力のバランス(均衡)が保たれているはずですが、コロナウイルスはすでにこの地域にいる米兵300名以上を感染させ、その数は加速度的に増加していることで、インド洋・太平洋戦略の要に位置する空母セオドア・ルーズベルトとロナルド・レーガンを機能不全に陥らせています。

これによりアジア・太平洋地域でのアメリカ軍の即応力を著しく削ぐ結果になり、相次ぐ北朝鮮のミサイル発射にあるような脅威に十分に対応しきれていません。

また、中国が自らアピールするように、コロナウイルスの感染ショックから本当に立ち直り始めているとしたら(注:実際には2回目、3回目の感染の波に襲われていて、まだまだ危機的状況との情報もありますが)、これまでアメリカの艦隊がフィリピンやインドネシア、ベトナムの後ろ盾として中国の進出に対抗してきた南シナ海における軍事的なバランスにも大きな変化がもたらされることになります。

現在、日中関係は比較的良好と言われていますが、当該地域での力のバランスの変化、特にアメリカのプレゼンスの低下は、今後、日本の安全保障政策にも大きな影響を与えるでしょう。

第2次世界大戦後、アメリカの独り勝ちに近い形で成り立っていた国際安全保障体制も、今回のコロナウイルスの感染拡大によって大きくその様相を変えることになるのかもしれません(とはいえ、アメリカの持つ戦力はまだまだ圧倒的なレベルですが、そのオペレーションを予定より早くAIベースに変えていかない限りは、その優位性をしばらくは生かせない状況に陥ります)。

コロナウイルスの感染拡大は世界にパニックをもたらしていますが、実はその裏でもう一つのウイルスが世界を脅威に陥れています。

それは病原体ではありませんし、別の感染症でもありません。それは様々なコンピューターウイルスによるサイバー攻撃です。現在、全世界的に顕在化しているのが、「マスク販売で利用者のクレジットカード情報を盗むフィッシングサイト」や、「コロナ対策」キーワードに用いて人々の不安を煽り、個人情報を不法に取得する手口の拡大です。

ダイアモンド・プリンセス号での感染拡大や北海道での緊急事態が発令された時期を皮切りに、世界的に個人情報を売買するダークネットに日本の銀行名や組織名、企業名などの情報が出回り始めているらしいのです。

世界が命を懸けてコロナウイルスの感染拡大と戦っている際に、その隙をついて別の攻撃を仕掛け、儲けようとしている輩がいることには、私は非常に嫌悪感をおぼえますが、このダークネットで売買される個人情報は、実際にはISなどのテロ組織の“新たな”資金源になっているとの報告がインターポールなどから各国の捜査機関にシェアされています。

中東地域や北アフリカ地域の混乱とパワーバランスの変化、EUの影響力の低下、アメリカのプレゼンスの低下、そしてロシアと中国の地域への進出により、シリアやイラクをはじめとする全地域で“安定した力の空白”が生まれています。その中で一度は米軍を中心とした連合軍により壊滅されたと発表されたISやその仲間たちは、この混乱の地に再結集され(主にシリアのイドリブ県とリビア)、ダークネットを巧みに用いて資金を蓄え、その勢力を再度強化しています。

彼らも、もちろんコロナウイルスの感染拡大の脅威をもろに受けている対象ですが、ISの場合、世界屈指のサイエンティスト集団ともいわれることもあり、独自に治療法や対応を練り、構成員のみならず、広げていく支配地域に暮らす人々を「コロナ対策」で釣り、支持を拡大するという戦略に出ています。ここでもコロナウイルスの感染拡大は、テロ組織を間接的にサポートしていると言えるでしょう。

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