「手作りマスク」が示したコロナ後の個人ビジネス時代の可能性

 

4.個人は小さなビジネスで生き抜こう

マスクが足りなくなって、手作りマスクが広がりました。ガーゼの生地やゴム紐も品不足が続いています。また、安いミシンも売れているそうです。私の知り合いの機屋さん、縫製屋さん、藍染め工場、アパレル企業、デザイナーも独自のマスクを作って販売しています。異業種の大手企業もマスク生産に参入しました。

日本で一般に市販されているマスクの7割は中国製で、多層構造の合繊不織布で作られています。全自動マシンで生産され、1点あたり数円のコストです。それが数十円で販売されていました。しかし、正価品の入荷が止まり、転売屋が1枚500円程度で販売するようになりました。

手作りマスクは、1000円から3000円程度ですが、作っている人の顔が見えます。それぞれに工夫しているのも楽しく、布製の手作りマスクを見直す人も増えました。自分でマスクを作るために、久しぶりにミシンを踏んでみると意外に楽しく、その勢いでトートバッグや洋服を作る人も増えているようです。

私が文化服装学院に通っていた40数年前は、まだ家庭で洋裁をする人がいました。月刊誌「装苑」の巻末には洋服の作図が掲載されていました。それを見て、全国のファッション専門学校の学生が服を作っていたのです。

また、デザイナーの登竜門である装苑賞を受賞した若いデザイナーも「半日で縫える直線裁ちワンピース」のような特集に作品を出していました。それらの服は、現在のユニクロの服のように完成度も高くないのですが、手作りの服として、それなりの魅力がありました。問題は消費者の価値観です。品質が高く安い商品が好きか。手作りのオンリーワンの商品が好きか。

私は新型コロナウイルス禍で、消費者心理はかなり変化すると思っています。海外生産から国内生産へという動きも出てくるでしょう。消費者心理は極端に振れます。

これまで安い量産品を選んでいた人も、手作り商品を選ぶかもしれません。単に商品を購入するのではなく、「支援する」「つながる」「共感する」という要素が含まれれば、商品だけの価値では決まりません。逆に言うと、手作り商品を継続するならば、こうした商品以外の情報やコミュニケーションが不可欠になるでしょう。

私が個人ビジネスを推奨する理由は、もう1つあります。それは、新型コロナウイルス禍と共に金融恐慌等が発生することが予想され、多くの企業倒産と失業者増加があるだろう、ということです。つまり、生き延びるためには、個人ビジネスが不可欠になると思うのです。

そんな時に、マスクを自作し、販売した経験が生きるのではないか。企業に依存するより、個人の方がビジネスがしやすい時代が来ると思います。

■編集後記「締めの都々逸」

「コロナ去っても 戻らぬ世界 はてなき  荒野を歩きだす」

グローバルビジネスが崩壊し、国や地域の経済に分解され、個人がビジネスの主役になる時代が来ると思います。いつになるか分からないけど、その時代を目指した教育プログラムを固めようと思います。(坂口昌章)

image by: shutterstock

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