「9月入学」導入は愚の骨頂。文科省の検討が混乱しか生まない訳

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未だ多くの地域で小中高の休校が続き、児童生徒の学習の機会が大きく侵害され、またその公平性の担保も危うくなっている今、にわかに注目を浴びているのが「9月入学制度」。その導入を巡っては各所でさまざまな議論がなされていますが、教育行政と現場双方を知り尽くす現役探偵の阿部泰尚(あべ・ひろたか)さんは、絶対反対の立場を取っています。なぜそのような判断をするに至ったのでしょうか。阿部さんは今回、自身のメルマガ『伝説の探偵』にその理由を記すとともに、どんな状況にあっても学びを止めない仕組みを作ることが重要であるとして、オンライン授業の導入を強く訴えています。

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コロナ休校に問う、9月入学検討より学びを止めない検討をせよ

2月27日の首相の要請で、春休みごろから始まった臨時休校。

4月16日の緊急事態宣言を受けて各地域の教育委員会などは臨時休校是非の判断をさらに迫られた。4月22日の段階では、全体として91%の学校が休校にしている。

学校教育は同じ空間に生徒をまとめて授業を行う方式である以上、新型コロナ予防で重要な「三密を避ける」ことは極めて困難である。

それでも、文科省は2020年3月24日に「学校再開ガイドライン」を公表している。ここでは、「家庭と連携し検温などをして感染源を避ける」「手洗いや咳エチケットをして感染経路を避ける」「免疫力を高める」「窓を開けて換気する」「マスクを装着する」などを挙げているが、そもそも発症しない段階で感染するウイルスであるのにこれら対策はあまりに学校現場に対して無責任といえるものであった。

簡単に言ってしまえば、「根性で感染するな」である。

富山では初のクラスター感染が起きたり、他県でも教員が感染していたというニュースが連日報道された。

5月4日に緊急事態宣言延長が首相から発表されたが、青森県と鳥取県は7日から小中学校の再開を決めている。

教育の計画は各教育委員会の管轄だ。地域差はあるにしても、次の夏休みは大幅に削られることだろう。

追いつかないオンライン授業

ほとんどの学校が休校している中、リモート授業による対策が注目を浴びるが、5月現在はほとんどが話題になっていない。そもそも2019年11月の消費税増税の枠組みとして、教育無償化と共に、全国の小中学校の通信環境を大型高速化したうえで、児童生徒1人1人に1台のタブレットパソコンなどを無償で配布するとされていた。

予算案としては4,000億円から5,000億円規模というものであったが、パソコンなどは性能が日々更新されるという問題やそもそも必要なのかと経済識者などの批判の対象となっていた。

ただ、このリモート授業はいじめなどによる不登校問題にも有効な対策であった。日本式の学校教育制度はそれこそ明治時代から大きな変化もなかろう。いつまで日本人は、自分たちが素晴らしい最先端をいくアジア人だと思い込んでいるのだろうか。

もはや時代遅れで、グローバルな世界では全く歯が立たない教育しかできていないことをいつになったら理解できるのだろうか。

それにしても、予算規模全体を見れば莫大なものではあるが、その見積もりは杜撰極まりない 。各報道によれば、1人1台を実現した地域では1台当たり25万円以上の費用がかかる計算となったというが、この消費税増税の際に見積もられた予算は1台4万5,000円であった。この4万5,000円の根拠は後付けで今では綿密な分析によってとされているが、当初出たのは文科省の役人が家電量販店を回って、必要なスペックを満たすパソコンの価格を調べたところ、大体4万5,000円だったからだとされていた。

現状、日本全国でみると、学校にある端末は5人に1台の計算になるのだという。つまり、現実としての達成率は低く、まだ導入されていない状態の中で、コロナ禍となってしまった。このままいけば、リモート授業などのオンライン化はいつの間にか有耶無耶となってしまうだろう。

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