気象予報士が恐れた現実。予測不能な「集中豪雨」が頻発するワケ

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ここ数年、梅雨の末期に日本を襲う集中豪雨が、今年も各地に甚大な被害をもたらしています。なぜこのような異常と言っても過言ではない自然災害が、ここまで頻発するようになってしまったのでしょうか。今回のメルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』では、「ニュースステーション」に気象予報士として出演していた健康社会学者の河合薫さんが、豪雨発生のメカニズムを解説するとともに、被害を最小限にとどめるため我々が日頃からしておくべきことを記しています。

プロフィール:河合薫(かわい・かおる)
健康社会学者(Ph.D.,保健学)、気象予報士。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。ANA国際線CAを経たのち、気象予報士として「ニュースステーション」などに出演。2007年に博士号(Ph.D)取得後は、産業ストレスを専門に調査研究を進めている。主な著書に、同メルマガの連載を元にした『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアムシリーズ)など多数。

予測不能な豪雨時代到来か

誰もが心配していたことが、現実になってしまいました。

熊本県南部の豪雨による川の氾濫で、熊本県球磨村の特別養護老人ホーム千寿園が水没。心肺停止で見つかっていた入所者の方たちが次々と亡くなり、死者は計49人にものぼり、人吉市や芦北町などからも痛ましい報告が相次いでいます。

この時間も、連絡が取れない方、孤立している方、避難所に避難されている方、浸水した家の片付けに追われている方など、被害は九州全土から中国・中部地方に広がっています。

おじいちゃんやおばあちゃんが、抱きかかえられて救助される様子がテレビで繰り返し映し出されていました。…なんかかわいそうで、痛ましくて、怖かったでしょうし、苦しかったでしょうし…。もっと事前にどうにかできなかったのか?胸が痛みます。

集中豪雨による被害は気象災害の中でも、「事前」に避難するのが極めて難しく、それを可能にするために観測網を整備したり、気象予報の精度をあげる取り組みがこれまで行われてきました。

しかし、現実は人の技術が自然の猛威を超えることは不可能です。

どんなに優れたタイムライン(時系列でいつ・どのような防災行動を・誰が行うかをまとめた防災計画)を作成していても、自然はときに、想定を超える暴れ方をします。

「昔から水害に襲われてきた地域だけど…こんなことは初めて」という声が、災害が起こるたびに聞かれるのもそのためです。

とりわけこの20年で予測が難しくなっているのが、「積乱雲」という豪雨を降らせる雲の発生回数です。かつては2~3時間警戒すればおさまっていた積乱雲が、何時間にもわたり繰り返し発生し、被害を拡大させているのです。

「線上降水帯」という言葉を、今回の豪雨を伝える際に気象予報士たちが使っていましたが、この「線上」に発生するのが雲10種の中で、もっとも気性が荒く、被害をもらたす積乱雲です。

積乱雲は、ゲリラ豪雨、集中豪雨に加え、雷や突風、竜巻、などをもたらします。通常は発生したのち、1時間ほどで消滅するのですが、積乱雲同士がくっつき「巨大な積乱雲」に発達し、何時間も豪雨を降らせたり、今回のようにいつまでも「発生、豪雨、消滅」をくりかえしたりする傾向が1990年代から世界中で確認されるようになってきました。

気象庁の観測によれば、1時間に50ミリ以上の豪雨は、30年で1.4倍に増加。80ミリ以上では1.7倍も多くなりました。雲が発達するには、雲を作る水=海水が必要ですが、海水温が高くなればなるほど空気中の水蒸気が増える。上空との温度差があればあるほど、雲は発達する。

つまり、下から上まで「真夏」になる8月より、下と上で温度差のある6~7月、9~10月の方が雲は発達しやすいのです。特に、最近は温暖化の影響で海水温が高い傾向が認められています。

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