元国税が暴露。日本人の「生命保険は掛け捨てが得」という大誤解

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少しでも負担を軽くしたい生命保険。いろいろなタイプがあって悩みますが、万一の際の保障だけを考えれば、掛け金の安い「掛け捨て型」がトクだと言う人がいます。しかし、この考えは多くの人にとって正しいとは言えないようです。元国税調査官の大村大次郎さんが、自身のメルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』でわかりやすく解説。月1万円貯金をする余裕のある人なら、生命保険料控除により「貯蓄型」を選んだ方がトクをすると教えてくれます。

※本記事は有料メルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』2020年7月16日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール大村大次郎おおむらおおじろう
大阪府出身。10年間の国税局勤務の後、経理事務所などを経て経営コンサルタント、フリーライターに。主な著書に「あらゆる領収書は経費で落とせる」(中央公論新社)「悪の会計学」(双葉社)がある。

「生命保険は掛け捨てがいい」という誤解

昨今、生命保険について大きな誤解がされています。それは「生命保険は掛け捨てがいい」という誤解です。なぜ生命保険は掛け捨てがいいという噂が広まっているかというと、その理論は次のようなものです。

「生命保険には貯蓄性のある保険と、貯蓄性のない掛け捨て保険がある」「貯蓄性がある生命保険は、利率が非常に低いので、まったく意味をなさない、それよりは、掛け捨ての生命保険に入って、保険料を安く抑える方がいい」というわけです。

しかし、これはすべての人に当てはまることではありません。というより、大半の人にとって、これは当てはまりません。というのも、この理論には、「税金」という観点がまったく抜け落ちているからです。

現在の税制には、「生命保険料控除」というものがあります。有名な控除なので聞いたことがある人も多いでしょう。生命保険料控除というのは、生命保険に加入している場合、一定の所得金額を控除できるというものです。ほとんどの方は、何らかの生命保険に加入しているので、ほとんどの方がこの控除を受けているはずです。

秋口に保険会社から生命保険料控除の証明書が送られてきて、サラリーマンの場合、会社にそれを提出すると、生命保険料控除が受けられます。会社から言われて10月ごろ、生命保険料控除の書類を提出した方も多いはずです。この生命保険料控除で安くなる税金分を考慮すれば、「掛け捨ての生命保険は決して有利ではない」のです。生命保険に加入することによって得られる節税額を考えれば、貯蓄型の生命保険も決して悪いとはいえないのです。

生命保険料控除の計算方法は、たとえば、年間8万円以上の生命保険に加入していれば、所得税の場合は、4万円の所得控除が受けられます。また住民税の場合は、28000円の所得控除が受けられます。サラリーマンの平均的な税率は、所得税率10%です。この所得税の税率が10%の人の場合は、所得税、住民税合わせて6800円の節税になるのです。

年間8万円の保険に入って6800円節税できるなら、けっこう大きいはずです。貯蓄性の生命保険に加入して、この6800円を利息と考えれば、金融商品としてかなりいいものといえます。8万円支払って6800円の利息がつくのと同じですからね。なんと8%以上の利率になるのです。またもう少し年収が多い所得税率20%の人は、10800円の節税になります。10800円のお金が浮くのは、けっこう大きいはずです。

ただし生命保険料控除は、掛け金が年間8万円のときが、控除額は最高の4万円となります。掛け金をそれ以上増やしても、控除額は4万円が限度です。なので、生命保険の掛け金は年間8万円にするのが、もっとも節税効率が高いといえます。年間8万円ぴったりの生命保険などはないと思われますが、だいたい8万円になるように狙っていけば、最大の利益が得られるわけです。

掛け捨ての生命保険ならば、年間8万円にはなりませんので、この恩恵は受けられません。だから生命保険に加入する場合は、生命保険そのものの有利不利だけではなく、節税額も含めたところで選ばなくてはならない、ということなのです。

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