池田教授が嘆く。忖度学者と役人の利権優先でPCR検査が進まない現状

 

感度というのは真の陽性者のうち検査によって陽性と判断される割合で、特異度は真の陰性者のうち検査によって陰性と判断される割合である。事前確率は検査対象者のうちどのくらい真の陽性者であるかという予測値である。事前確率は予測値であって、厳密には知る方法がない。おおよその目安である。例えば、熱があってだるさや頭痛を訴えている人たちを対象にすれば、事前確率はかなり高いと予測されるが、見かけ健康な人たちを対象にすればずっと低くなると予測される。

検査が沢山出来るようになって、例えば1000万人の検体を検査したとしよう。健康な人も不健康な人も無作為に抽出してとりあえず事前確率を1%と考えよう。すると10万人の人が真の感染者と推定される。感度が70%と言われているので、検査の結果、陽性と判定される人は7万人ということになる。3万人は偽陰性である。

一方、真の非感染者は990万人と推定され、少し前に言われていた特異度の99%を適用すると、陰性と判定される人は980万人で、10万人は偽陽性ということになる。付言すれば、偽陰性と真の陰性、あるいは偽陽性と真の陽性を区別することは理念としては可能でも現実には不可能である。別言すれば、真の感染者数を知る方途がない以上、感度も特異度もそれほど信頼に足る数値ではないということだ。

そこで、一般人へのPCR検査不要論を唱える人は次のように主張したのだ。COVID-19を指定感染症としている現行法では、この10万人の偽陽性の人は原則として隔離入院させる必要があるため、偽陽性の非感染者にベッドが占拠され真の感染者を救えなくなる恐れがあり、さらに、非感染者を隔離するのは人権侵害である。一方、3万人の偽陰性の人は、自分は感染していないと信じて出歩くため、感染源となって感染を広げるので、いずれにせよ無闇にPCR検査をすべきでない。

前者の議論の前提は、COVID-19が指定感染症ということからくる議論で、政府が泡食って1月の下旬に決定した政令でCOVID-19を指定感染症にしてしまったことでそういうことが生じたので、さっさと指定感染症から外してしまえば、人権侵害も医療崩壊もなくなる。いわば、マッチポンプみたいな議論である。

さらに言えば特異度はきちんとした検査をすれば、100%に近づけることができるはずで、現在の精度は99.99%くらいになっていると思う。すると1000万人中、偽陽性の人は990人で大した数ではない。中には99.9999%でも100%にならない限り、NGだと主張するトンデモナイ医者もいるが、この場合偽陽性の人は1000万人中10人となり、これを問題にする人は、交通事故の死者が1000万人中10人でも「ダメ、ゼッタイ」と言っているようなもので、アホとしか言いようがない。

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