【書評】なぜ能力が低い人ほど自分の脳力を著しく過大評価するか

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能力がないのに自信満々な人、かならず話をややこしくする人など、世の中は「面倒くさい人」に溢れています。そんなタイプと日常的に付き合うことを余儀なくされているという方、多いのではないでしょうか。今回の無料メルマガ『クリエイターへ【日刊デジタルクリエイターズ】』の編集長・柴田忠男さんが紹介しているのは、読めば「面倒くさいと感じる身近な人の心理に理解が深まる」という一冊。さらに本書には、「自身が面倒な人と思われないためのヒント」も記されています。

偏屈BOOK案内:榎本博明『かかわると面倒くさい人』

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榎本博明 著/日本経済新聞出版

なぜあの人は他人を疲れさせるのか?職場からご近所、親戚関係まで、社会に蔓延する「面倒くさい人」のメカニズムを、心理学博士が徹底的に解剖する、と謳った新書。タイトルに興味を持ったので読んだが、もはや隠居の私は他人とリアルで関わることが殆どなくなったので、この本に出てくる「あー、ホント面倒くさい」と思う相手は存在しない。妻は別だが、そこはおいといて。

なにしろわたしは過去何十年も「面倒くさい人」といわれてきた。理由はわからない(ウソ)。著者も、ある種の人たちにとっては、「ものすごーく面倒くさいヤツ」のようだ。心理学を専門にしていると、単に人を観察するだけでなく、人の反応を参考にしながら自分自身を振り返ることが多いため、そうした自己認識もちゃんとあるというが、自分なりのこだわりはもちたいという。

悪い人じゃないんだけど「面倒な人」は確かに存在する。何年も関わっている市の委員会では、主流派にとってわたしはそういう存在だ。それはおいといて、周囲の人がとても面倒くさがっているのに、本人は平然としていて、そもそも自分が面倒くさい人物になっているという自覚がない。周囲を苛つかせているということに気づかない。だから困る。いるんだな、今も昔も、そういう人が。

そんな人物のために生活をかき乱されてはたまらん。何とかうまくかわす術を身につければ、心のエネルギーを吸い取られずにすむ。そのためには、身近によくいる面倒くさい人の行動パターンや、その背後で作動している心理メカニズムを知ることが必要だ。って、素人には無理な話だから、MP人間科学研究所の代表が、10タイプある「あの人」の正体をわかりやすく説明してくれる。

さらに、その面倒な人の背後に潜む心理メカニズムを解説する。手がつけられないくらい「話をややこしくする天才」とどうつきあうかをアドバイスし、最後は「面倒な人と思われないために」はどうすべかを示唆する。現役向けの本だから、わたしが読んでもあっそーなの、で終わってしまいそうだが、実はわたしも「面倒くさい人」を卒業した好々爺ではないことを実感するのだった。

能力の低い人ほど自分の能力を著しく過大評価しており、逆に能力の高い人は自分の能力を過小評価する傾向があることを実証したのが「ダニング=クルーガー効果」である。能力の低い人は、ただ何かをする能力が低いというだけでなく、自分の能力がまだまだ低いことに気づく能力さえ低いということだ。

まさに、このことが、なぜか仕事のできない人ほど不釣り合いな自信をもっている理由といえる。そうだったのか。できないくせに「できるアピール」をする妙な自信を持つ部下に手を焼いている人よ。本人は自覚していない、できるつもりでいる。だからこそ面倒なのである。バカは死ななきゃ治らない。

「本書を読むことで、面倒くさいと感じる身近な人の心理に理解が深まり、イライラが軽減し、寛容になれた。自分がどんな人を面倒くさいと感じるかをはっきりさせることで、自分の弱点や偏りに気づくことができた。そんな反応を期待したい」と後書きにある。働き盛りの人にお奨めしたい。

編集長 柴田忠男

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