(6)新しい役割と任務に鑑み、日本は自国の防衛と、米国と共同で行う地域の防衛を含め、自身に課せられた責任に対する範囲を拡大すべきである。同盟には、より強固で、均等に配分された、相互運用性のある情報・監視・偵察(ISR)能力と活動が、日本の領域を超えて必要となる。平時(peacetime)、緊張(tension)、危機(crisis)、戦時(war)といった安全保障上の段階を通じて、米軍と自衛隊の全面的な協力を認めることは、日本の責任ある権限の一部である。
これがまさに、安倍政権が集団自衛権を許容する法律を野党や世論の反対を押し切って強行採決した理由です。 評価:A
(7)イランがホルムズ海峡を封鎖する意図もしくは兆候を最初に言葉で示した際には、日本は単独で掃海艇を同海峡に派遣すべきである。また、日本は「航行の自由」を確立するため、米国との共同による南シナ海における監視活動にあたるべきである。
まだイランがホルムズ海峡を封鎖するまでには至っていませんが、いざという時に自衛隊を派遣するのに必要な国内法は整っています。 評価:A
(8)日本は、日米2国間の、あるいは日本が保有する国家機密の保全にかかる、防衛省の法律に基づく能力の向上を図るべきである。
機密保持法案を、これも国民と野党の反対を押し切って強行採決。 評価:A
(9)国連平和維持活動(PKO)へのさらなる参加のため、日本は自国PKO要員が、文民の他、他国のPKO要員、さらに要すれば部隊を防護することができるよう、法的権限の範囲を拡大すべきである。
この件に関しては、南スーダンにPKO要因として派遣された自衛隊員が「戦闘状態」に巻き込まれながらも、その記録を隠蔽した事件が発覚して大問題になりました。米国から見れば、(自衛隊員が他国で戦闘行為をして良いという)法的整備が遅れていたことが原因です。 評価:C
これを見ても分かる通り、安倍政権の政策の骨子は、この「第三次アーミテージ・ナイ報告」をベースに作ったと言っても過言ではないぐらい、この報告書の要望に答える形で作られています(それが、彼らが「ジャパン・ハンドラー」と呼ばれる理由です)。
ちなみに、米国からの要望は、以前は「年次改革要望書」という形で米国からの要望として日本政府に伝えられていましたが(郵便局の民営化は、小泉政権時代にこの要望に従って行われました)、民主党の鳩山政権時代に廃止されてしまったために、現在では、「日本通の要人」から構成されるCSISからの「報告書」という形で、自民党に伝えられているのです。
米国政府から日本政府への要望が、シンクタンクでしかないCSISから自民党に伝えられるという形が、色々な意味でとても不健全だと私は思います。
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