世界が感嘆した「日本流交渉術」なぜ日本人は海外要人を操れるのか?

 

中国や韓国、中東諸国と交渉する際のポイント

他に日本流交渉術の強みがあるとしたら、今回の交渉結果の良し悪しのみに囚われず、【相手との今後の付き合い・良好な関係を保持すること】も“大事な交渉目標”に含めて、中長期的な視点からの提案や合意を描くことが出来ることでしょう。

アジアといってもなかなか一般化して語ることはできませんが、唯一特徴として共通している“交渉文化”があるとしたら、この【中長期的な付き合いを非常に重視する】(相手の顔を立てて、良い関係を維持する)という点です。

中国の企業や政府相手でもそうですし、東南アジア諸国との交渉でも同じような傾向があります。そして国連の地域割りではWestern Asiaともいわれる中東アラブ諸国でも同じです。

欧米型は契約書がすべてとの考えですので、非常に細部まで内容や表現を詰め、合意した内容を履行することがすべてになりますが、“アジア”的に重要視される内容は少し異なります。

例えば、イスラムのアラブ諸国との交渉時には、契約書の取り交わしはもちろん大事ですが、最後に署名に続いて“きちんと固い握手を交わしたか”が合意における最重要マターです。

中国については、一般的な傾向を申し上げると、【トップダウンではなく、きちんと実行担当者との間で合意された内容か否か】というポイントと、【合意した相手が長年付き合う友人か否か】というポイントだと言われています。

韓国では、担当者間の友情と信頼が絶対だと言われました。一緒に焼酎を煽り、いろいろと議論をし、最後は肩を組んで笑いあえる相手に対しては、それぞれが背負う立場を超えた“約束”が存在します。

日韓関係では、もろもろ政府間での“約束事”が反故にされる場面を多く見かけますが、合意の際に【彼が(彼女が)そういうんだから、そうなんだろう。だから信じて守るんだ】というレベルでの合意にまで至っていないのではないかと、韓国のステークホルダーとも多く交渉をしてきた身としては、勝手に思ってしまいます。

そのような心理や信頼に根差した関係も重要な合意内容に含めるというのも、実際には日本流の交渉術の妙なのではないかと、私は今、感じています。

この点も、先ほどの“分からない・読めないが故の怖さ・不安”と共に、【絶対に交渉を決裂させず、どこかに軟着陸させる術を提供する】というように、地域関係なく理解されていることも分かってきました。

私の交渉術は、いろいろな種類のものが混じりあい、最終的には私ならではのスタイルを確立していますが、国際舞台で【最後の調停官】と呼んでいただけるのは、私の日本人的なスタイルが大きく作用しているのだと確信しています。

日本人は決して交渉下手ではありません。大事なことは、ご自分のタイプをきちんと認識し(他人のことを調べつくすように、自分のことを徹底的に調べつくし分析してくださいね)、その上でご自分のコアになる交渉スタイルを作り出されることをお勧めします。

コアがあれば、あとはいろいろな応用編を作りやすくなりますし、きちんと設定された交渉スタイルは、“弱さ”や“苦手”という心理とは無縁です。

今回は思いの丈を語ってしまったような気もしますが、少しでも参考になりましたでしょうか?

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