中国を「世界の工場」に育てた米国が習近平を憎みはじめた真の理由

 

3.グローバル経済に依存していた中国

中国は、世界で最も自由主義経済を信じていたと思う。お金さえ出せば、いつでも何でも購入することができる。だから、技術を開発するより、買ってきた方が早いと考えたのだ。しかし、米国の規制によって、必要な部品が入手できなくなり、米国の技術を使ったソフトも使えなくなった。あと一息だった5Gにおける世界制覇も今のところ、完全に封じられた形だ。

一帯一路で多大な資金を投入した国も、中国の味方にはならなかった。金でつながっても、金の切れ目が縁の切れ目だ。多分、中国は米国も同様に考えると思ったのだろう。中国とのデカップリングは米国にも大きな経済的損失を与える。経済的に考えれば、どこかで妥協するはずだ。

しかし、その思惑は裏目に出た。米国は徹底的に中国を切り離しに掛かっている。サプライチェーンを見直し、新たな経済圏を作ってでも、中国を切り離すつもりだ。米国は製造業を国内に戻すと言っているが、米国のコストで製造業が成立するのだろうか。誰が、儲からないビジネスをするのだろうか。本当に工場で働きたいアメリカ人はいるのだろうか。

中国でさえも、人件費が上昇し、製造業を維持することが困難になっている。製造業より儲かる産業があれば、そちらに転向したいと考えているだろう。そこで、ハイテク、バイオ、ナノテク等の技術を集め、企業を育成しているのだ。

米国は軍事力と金融ビジネスで世界をリードしている。しかし、金融ビジネスは常にバブル崩壊の危険性をはらんでいる。世界の金融市場は連携しているので、中国の不動産バブルの崩壊が米国にも影響するだろうし、米国のジャンク債市場が破綻すれば、日本の年金も消えるかもしれない。

4.異質な日本の経済システム

どんな商品も大量生産すれば、最終的にはコモディティ化し、価格が下落する。そして、利益率も低くなる。これは製造業の宿命だろう。米国が製造業を捨てたのは、製造業の利益率の低さではないか。

しかし、金融もバブル化し、それが崩壊するというリスクから逃れられない。リーマンショックの後も、本質的には変わっていない。新たな金融商品を開発し、それを世界中に売っている。このままなら、再び破綻が起きるだろう。

米国と中国のビジネスはよく似ている。違いは、政治体制だ。中国は、共産党一党独裁であり、国全体を一つの方向に向けることができる。個々の企業やビジネスで採算が取れなくても、国家全体が世界の中で優位に立てればいいのだ。

全ては戦略的に、世界の中で覇権を取るために活動している。これは米国も同様だ。ビジネスでは企業単位で動くが、安全保障や軍事的な驚異に対しては、中国同様に国を挙げて対抗する。その裏付けは、軍事力と機軸通貨ドルの力である。

中国は経済力はあるが、軍事力が弱く、人民元の通貨としての力も弱い。強い経済力も中身は組み立て加工が主であり、技術、部品等は他国に依存している。そのため、グローバル経済が止まれば、何もできなくなるのである。

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