国の防衛だけでなく、大規模災害時の最後の砦となるのは陸上自衛隊のマンパワーです。その陸上自衛隊の適正規模を弾き出す根拠となるのは、世界で6番目に長い日本列島の海岸線です。日本は、領海と排他的経済水域(EEZ)を合わせると、世界で6番目に広い海を抱えていますが、入り組んだ地形や離島も多く、海岸線のほうもまた6番目に長いのです。
その長い海岸線をもとに、大規模災害時などに国民の命を守るのに必要な陸上自衛隊を弾き出すと、適正規模は25万人になります。現在の定員15万777人(2020年3月現在)は何の根拠もない数字ですが、適正規模の60%ほどでしかないことがわかります。むろん、充足率からいくと定員を1万人以上も下回る13万8060人(同)の実員しか備えていません。
マスコミが国民に問いかけ、それを国会で取り上げ、その結果を首相が国民に問い、陸上自衛隊の適正規模を25万人に少しでも近づけていく。それに伴い、海上、航空自衛隊も適正規模に近づいていく。そういう歩みを不断にしなければ、国家国民の安全の基盤は定まらないのです。
Mサイズのピザパイを前に、陸海空自衛隊で分捕る量、つまり予算の大きさを議論したり、自衛隊の必要性を国民にアピールするための装備品などトッピングの選定に明け暮れたりするところから、そろそろ抜け出そうではありませんか。
マスコミは、そうした方向に世論を先導する役割を担っているのです。その点を忘れないでほしいものです。上記の記事の担当記者が、別な機会に適正規模の問題を取り上げることを期待しています。(小川和久)
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