日本は「沖縄への遠慮」をやめよ。過度の贖罪意識が現実を泥沼化する

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日本政府が公式に先住民と認めているのはアイヌ民族だけですが、政策的には、沖縄に対する振興策は、アイヌに対するものに通底するものがあるという認識を示すのは、メルマガ『NEWSを疑え!』を主宰する軍事アナリストの小川和久さんです。小川さんは、基地問題をはじめとする沖縄の問題に率直な意見を述べると、耳をふさぐような沖縄の人が少なからずいることを指摘。自身の著書とも絡め、問題複雑化の原因の1つについて論じています。

沖縄との「普通の会話」

先日、ニュース番組でアイヌ文化の伝承の取り組みが紹介され、それを眺めながら沖縄の問題に思いを馳せることになりました。アイヌ民族への扱いは、「北海道旧土人保護法」が1997年まで存続していたことでもわかるように、米国の原住民ネイティブ・アメリカン(以前はインディアンと呼称)がいまだに居留地で暮らしているのと比べても、「土人」の呼称を法律に残すなど、先進民主主義国家として恥ずべき状態が続き、ようやく前進が見られたといった段階ではないでしょうか。

北海道旧土人保護法に代わって制定されたのは、アイヌ文化振興法(アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統等に関する知識の普及及び啓発に関する法律)です。沖縄についても、アイヌの場合のような「保護法」があった訳ではありませんが、いまだに「沖縄振興特別措置法」があることでもわかるように、「大和民族」とは違う民族との関係という点では、アイヌと似たような関わりが続いてきたことは否定できません。いくら「同じ日本人だ」と言っても、民族の違いという意識は明らかに存在しているからです。

沖縄の場合、そこに輪をかけてきたのが「本土」側の贖罪意識であり、遠慮や忖度でした。戦前、沖縄を差別的に扱い、悪いことをした、戦後も占領に続く米軍基地問題で迷惑をかけている──ということで、本土側の腰が引けてしまい、言うべきこともはっきり口にすることなく来てしまった面があります。そういうなかでは、悪くすると本土側の負い目を逆手にとって利用しようとするケースも出てきます。

私は今年3月、普天間基地返還合意からの当事者としての関わりを単行本『フテンマ戦記 基地返還が迷走した本当の理由』(文藝春秋)として出版しましたが、普天間基地移設問題ひとつをとっても、膠着状態が続いてきた根底には、本土側の負い目とそれに便乗しようとする地元の利権の構造があることを、押さえておきたいと思います。

アイヌと沖縄については、特に明治以降の日本政府との関わりの歴史を正しく教え、その文化や価値観を尊重することは言うまでもありません。しかし、そのことと普通に進めていくべき問題を切り離さないと、諸課題が泥沼にはまってしまうのです。

特に沖縄の人との間は、「普通の日本人同士」としての会話が成り立たない傾向が続いてきました。沖縄側も、普通に扱われることに慣れていないせいもあり、私のようにストレートに問題解決の処方箋を出すと、「小川さんはわれわれが聞きたくないことをずけずけ言う」と、耳をふさぐマスコミ人さえいたほどです。

もちろん、沖縄側でも私の考え方を支持してくれる少なからぬ皆さんは、私が口にする「普通の会話」を当然のこととして受け止めてくれました。だから、沖縄との関わりを続けることができています。

私が普天間基地問題を通じてどのように沖縄と関わってきたかは、拙著『フテンマ戦記』を読んでいただきたいと思いますが、いま一度、「普通の会話」で進めるべき問題が贖罪意識や遠慮、忖度にまみれていないか、それが混乱を生み出す原因になっていないか、見つめ直してみる必要があるのではないかと思います。(小川和久)

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地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。一流ビジネスマンとして世界を相手に勝とうとすれば、メルマガが扱っている分野は外せない。

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