ついに「糖尿病」と「癌」の関連性が明らかに。日米で同様の報告

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進行するとさまざまな合併症を引き起こす糖尿病。合併症とは言えないまでも、いくつかの癌にかかりやすくなることが明らかになっています。『糖尿病・ダイエットに!ドクター江部の糖質オフ!健康ライフ』著者で、糖質制限の提唱者としても知られる医師の江部康二先生が、糖尿病と癌の関連性について、日本とアメリカの学会の報告を要約。なぜ糖尿病患者は癌のリスクが上がるのか、リスクを軽減するにはどうすればいいのかを探っています。

糖尿病と発癌のリスク。糖質制限食で発癌予防は?

近年、糖尿病と癌罹患リスクとの関連が明らかになってきており、糖尿病と癌との関連について、日本糖尿病学会と日本癌学会の専門家による合同委員会が設立されました。

2013年に糖尿病と癌に関する委員会報告が、医学雑誌〔糖尿病 56(6):374~390、2013〕に掲載されました。

A)以下は委員会報告の要約です。

  • 近年、糖尿病と癌罹患リスクとの関連が明らかになってきており、糖尿病と癌との関連について、日本糖尿病学会と日本癌学会の専門家による合同委員会を設立することとなった。
  • わが国の疫学データでは、糖尿病は全癌、大腸癌、肝臓癌、膵臓癌のリスク増加と関連していた。
  • 糖尿病による癌発生促進のメカニズムとしてはインスリン抵抗性とそれに伴う高インスリン血症、高血糖、炎症などが想定されている。
  • 2型糖尿病と癌に共通の危険因子としては加齢、男性、肥満、低身体活動量、不適切な食事(赤肉・加工肉の摂取過剰、野菜・果物・食物繊維の摂取不足など)、過剰飲酒や喫煙が挙げられる。
  • 不適切な食事、運動不足、喫煙、過剰飲酒は糖尿病と癌罹患の共通の危険因子であるので、糖尿病患者における食事療法、運動療法、禁煙、節酒は癌リスク減少につながる可能性がある。
  • 特定の糖尿病治療薬が癌罹患リスクに影響を及ぼすか否かについてのエビデンスは現時点では限定的である。

B)以下は委員会報告からの引用で、米国糖尿病学会と米国癌学会の見解です。

2010年、ADA(American Diabetes Association:米国糖尿病学会)とACS(American Cancer Society:米国癌学会)は合同で糖尿病と癌との関連についてのconsensus reportを発表し、糖尿病と癌罹患もしくは癌予後との間の関係、糖尿病と癌に共通する危険因子、糖尿病と癌とを結ぶ分子機構、糖尿病治療が癌リスクや癌予後に及ぼす影響について多面的に論じている。ADAとACSはこの報告書で9つの要約と推奨事項をまとめた。この中で、

a)糖尿病(主に2型糖尿病)は肝臓癌、膵臓癌、子宮内膜癌、大腸癌、乳癌、膀胱癌などのリスク増加と関連がある一方で、前立腺癌リスク減少に関連していること

b)健康的な食事、運動、体重コントロールは2型糖尿病およびいくつかの癌の罹患リスクを減少し予後を改善するため推奨すべきであること

c)医療者は糖尿病患者に対し性別・年齢に応じて適切に癌のスクリーニングを受診するように推奨すべきであること

d)いくつかの糖尿病治療薬と癌罹患リスクとの関連が報告されているが、現時点では糖尿病治療薬を選択する際に癌のリスクを主要な検討事項とするべきではないことなどが挙げられた。

このように糖尿病は、日本でも米国でも、確実に癌発生のリスクとなることがあきらかとなってきています。その機序を大別すると以下の3つに集約されます。

(1)高血糖のリスク
(2)インスリン抵抗性とそれに伴う高インスリン血症のリスク
(3)肥満のリスク

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(財)高雄病院および(社)日本糖質制限医療推進協会 理事長。内科医。漢方医。京都大学医学部卒、同大胸部疾患研究所等を経て、1978年より医局長として高雄病院勤務。2000年理事長就任。高雄病院での豊富な症例をもとに、糖尿病治療、メタボ対策としての糖質制限食療法の体系を確立。自らも二型糖尿病であるために実践し、薬に頼らない進行防止、合併症予防に成功している。

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