モーニングショー玉川徹氏の自己矛盾と「因果不明」発言にみるTVの傲慢

 

学問的業績よりテレビに出ている学者のほうが偉い国ニッポン

さて、何度も問題にするように、高齢者は危ないからという扱いをコロナで受けることになった。

いま時、65をちょっと過ぎたくらいで高齢者扱いする必要がある人がどこにいるのか、というのが高齢者を専門とする医者としては実感するところだし、現実に高齢者の定義を変えようという動きも強い。

要するに高齢者にも働かせるし、年金もなるべく遅くなるまで払いたくないというときには、前期高齢者、少なくとも70歳未満の人は高齢者扱いしない方向になっているし、免許を取り上げる時だってさすがに75歳で線を引いた。

それなのに、Go Toトラベルを適用しないというときには65歳以上はダメということになった。

なんというダブルスタンダード。

ところが、優先的に入院させる年齢が65歳から70歳に引き上げられたという。

こういうことにはきちんと根拠をあげてやるのが科学者の仕事だろうが、「専門家」会議はそんなことはしない。

それでも、Go Toをやめさせて、言うべきことを公言した立派な人ということになる。

この国は、学問的業績よりテレビに出ている学者のほうが偉いのだから、立派な学者と思われるためには、テレビ局が言ってほしいことを言う学者にならないといけないようだ。

激減したインフルエンザ患者

さて、今回の自粛政策は確かにメンタルや免疫学的なこと、あるいは高齢者の運動機能や認知機能には大きな影響(というか副作用)があるが、死者を減らす効果は確かにあるようだ。

昨年のインフルエンザの累計患者数が約700万人だったそうだが、今年は11月15日までの累計でなんと171人だという。

たとえば11月第二週を比べてみると、2019年の9107人に比べて今年は23人という激減だ。

みんながマスクをし、人と会わず、会話も控え、手洗いや消毒を徹底すると感染症がそれだけ減るということだ。

高齢者施設や病院の関係者に聞いても、肺炎も激減しているようだ。

インフルエンザは毎年3000人以上の死者が出るし、それによって持病が悪化して死ぬ人も合わせると1万人以上の命を奪っている(コロナの死者の場合、それもカウントされている)。

肺炎も毎年10万人もの命を奪っている。3割減ったら3万人だ。

おそらく自殺など副作用の影響で1万人死んでも、感染症で死ぬ人が4万人減れば、昨年などより全体の死者数は確実に減る。

ということは、コロナの自粛政策を主張する人たちが、命のためには経済も人間らしい楽しみも我慢すべきと主張しているなら、命のためなら一生、この「新しい生活」をすべきということになる。

そのほうが確実に人は死なないのだから。

コロナの時と違って、インフルエンザや肺炎は高齢者しか死なないから(数は少ないがこれは嘘である)、コロナが終われば通常の日常に戻っていいとでも言うのだろうか?

要するに、ほかのすべての人間的な生活を犠牲にしても感染症が減るならそれでいい、という発想だ。治療が何もない時代であればペスト禍のあとにルネッサンスが起こったが、その逆をやろうという発想である。

ここでもマスコミの高齢者差別が露わになるだろう。

人は一定数死ぬということや、人間生活を潤滑にするためにはそれも仕方がないという受け入れが今こそ必要に思えてならない。

かつては2万人の命を奪っても自動車を禁止にはしなかったし、今だって5万人の命を毎年奪っていてもアルコールは禁止にならないのだから。

image by: Osugi / Shutterstock.com

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