懲役で恫喝も。コロナ蔓延の責任も取らず罰則を科す菅政権の意味不明

kawai20210120
 

拡大の一途を辿り、収束の糸口さえ見えない新型コロナウイルスによる感染症。国民の不安が高まり続ける中、菅政権は未だ迷走を続けている感が否めません。政府はなぜこのような「機能不全」に陥っているのでしょうか。今回のメルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』では健康社会学者の河合薫さんが、第1波の時点で明らかになっていたリスクファクター対策を講じてこなかった政権を批判するとともに、打つ手すべてが的外れとなる原因に、菅首相の「現場を見る力の足りなさ」を挙げています。

プロフィール:河合薫(かわい・かおる)
健康社会学者(Ph.D.,保健学)、気象予報士。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。ANA国際線CAを経たのち、気象予報士として「ニュースステーション」などに出演。2007年に博士号(Ph.D)取得後は、産業ストレスを専門に調査研究を進めている。主な著書に、同メルマガの連載を元にした『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアムシリーズ)など多数。

緊急事態宣言の意味と罰の行使

コロナ感染拡大が止まりません。

気の緩みがある、なれがある、若者に届いてない、などなど感染拡大が続く理由を、政府もメディアもあげつらっていますが、そもそも「緊急事態宣言」って、いったい何なんでしょう。

政府が13日に、新たに栃木・愛知・岐阜・京都・大阪・兵庫・福岡の7府県に対して緊急事態宣言を出した際には、「福岡は要請してないのに、なぜ入れた?」だの、「熊本は要請したのに、なぜ入れない?」だのという報道が飛びかいました。

また、翌日の14日には西村大臣が「広島を緊急事態宣言に準じた措置を行うことを検討する」と明らかにしたり…。

さらに、18日には茨城が、19日には沖縄が「県独自の緊急事態宣言」を発令しています。

コロナ感染拡大は全国で深刻化しているのに、“準じた”だの、“県独自”だの全くもってわけがわかりません。

現段階で国にあって、独自にないものといえば、カネ。そうカネ、です。

  • 認められた地域では日額最大6万円の協力金、飲食店の取引先にも中小に40万円、個人事業主に20万円
  • コロナ患者を受け入れる病床1床当たり450万円
  • 重症患者向けは1,950万円、それ以外は900万円

このカネが欲しい!だから指定してくれ!というのなら、まだわかります。ところが、国は「準じた」地域ではその「カネ」も「準ずる支援をする」というのです。

…んったく、わけのわからないことだらけです。

そもそも、「緊急事態宣言」は、新型インフルエンザ等対策特別措置法、第32条第1項に基づき、以下のように明記されています。

緊急事態宣言に関すること(特措法32条)

 

新型インフルエンザ等緊急事態宣言とは、季節性インフルエンザに比べて重篤になる症例が国内で多く発生し、全国的な急速なまん延により、国民生活や国民経済に甚大な影響を及ぼす場合に、政府対策本部長(内閣総理大臣)が、「期間・区域・事案の概要」を特定して宣言するものです。

 

この宣言の後、都道府県知事は、より具体的な期間や区域を定め、不要不急の外出自粛や施設の使用制限の要請といった緊急事態措置を講ずることができるようになります。

つまり、条文を読む限り、「緊急事態宣言」→「各知事が緊急事態措置」を講ずることができるようになる、と。

しかしながら、1回目の緊急事態発令が検討されていたときに、「どこまで国が知事に強制できるか、特措法の解説書を読んでも曖昧で、その都度調整するしかない」という意見が、政府高官から出ていました。

そこで自治体の措置は「あらかじめ国と協議」するとし、裁量に縛りをかけた。なのに西村大臣は、大阪府の吉村洋文知事に「休業の要請・解除は知事の裁量」と発言。権限に伴う責任を自治体に押し付けてしまったのです。

この時点で既に、政府の軸足はブレブレで、どの範囲まで国は知事に強制できるのか、仕切りを明確にし、特措法を改正すべし!という意見はでていました。が、その後具体的な動きはなく、今国会でやっと「特措法改正案」が提出されることに。後手後手といわざるをえません。

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