中国とトルコに下る裁き。「好々爺」バイデンが許さぬ敵と裏切り者の罪

 

バイデン新政権が抱くEUへの懐疑論

その背景には、バイデン新政権が抱く欧州(EU)への懐疑論もあります。トランプ政権下で一度、欧州の中国離れが加速し、やっと自由主義社会による対中包囲網が強化されるかと思った矢先、すでにバイデン政権誕生が確実視されていた12月30日に、EUは懸案だった中国との投資協定の締結に漕ぎつけ、“中国とは切れていない”ことが露呈しました。

ブリンケン国務長官の言葉を借りると、「EUはアメリカと中国を両天秤にかけて、それぞれから何かを引き出そうとし、再度、国際舞台での主導権を狙いに来ている」という見解がバイデン政権内では強まっている様子です。

一応、言い訳をするかのように、2021年に入ってから、フォンデアライデン委員長をはじめ、ドイツのメルケル首相も、「欧州は中国の脅威を認識し、中国への傾倒と中国の影響力の伸長を警戒するので、ASEANそしてインド・太平洋とのパートナーシップ強化に注力する」とのコメントを出しています。

しかし、バイデン政権内では「直接的に接していない“アジア”での欧州の影響力が削がれることを警戒しているだけだろうが、そもそもどうしてアジアで起こることを、いちいち欧州に相談しなくてはならないのか?」との意見が早速出ています。

つまり欧州サイドからも、米国サイドからも、期待されている大西洋を挟んだパートナーシップと連携の強化という期待に対して、双方向での不信感があるということになります。

ロシアも中国も、トルコも、中東アラブ諸国も、そんなことはもちろん知っていますが、特段、ちょっかいを出すことはなく、今のところ、米欧の“仲直り”がうまくいくかを眺めているだけと思われます。

そのような中、異彩を放つのが英国の存在です。

EUに取り込まれていたしばらくの間、Trans-Atlantic Great Alliance(大西洋をまたいだ偉大な同盟)と言われた「特別な関係」の影は薄くなっていましたが、かつてチャーチル首相も、サッチャー首相も言っていたように、ジョンソン政権とバイデン新政権は、かつてのような【特別な関係】に回帰していくようです。

すでに英国の目はドーバー海峡方面から、大西洋の向こう側に注がれ、まるで相思相愛とでも言うかのように、バイデン政権の外交安全保障部隊は、ロンドンへ熱視線を送っているようです。

それは、バイデン政権が、英国のアジアへの“再進出”を後押しし、英国がASEAN各国と結ぼうとするFTAを実質的にサポートする動きを出していることからも分かります。

TPPへの復帰は、バイデン政権下でも議会での懐疑派の存在もあり、なかなか困難かと思いますが、そのTPPに英国が加盟をしようとしていることに、バイデン政権がケチをつけるような雰囲気はなく、逆に後押しているとも聞きます。

ちょっと意地が悪い見方かもしれませんが、21日のCNNでのコメントでも触れた通り、これはどっちつかずのEU(ブリュッセル)の姿勢に対する皮肉ではないかとも思われます。

今後、米欧関係がどうなり、米英の連携がどうなるのか。非常に注目です。

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