雇用される側には嫌な言葉「余剰人員」を新聞はどう報じてきたのか?

 

2020年6月16日付
ルフトハンザの2万2千人人員削減のニュースの中で。「余剰人員の内訳は、パイロットが600人、乗務員が2600人、本社などの業務系社員が1400人など。同社の人事担当幹部は声明で「人件費削減で競争力を高めなければ、余剰人員の数はさらに増えるだろう」と述べた」と。

*「はとバス」は全従業員1400人中6割ほどの870人を休業対象に。東京ディズニーランド近くのホテルは10人の従業員の大半を休ませている。政府の対策は「雇用調整助成金の特例措置」のみ。エコノミストは「転職支援」が必要なのではないかと問題提起している。

2020年8月16日付
農家は外国人労働者(技能実習生)や子育て世代の働き手が稼働できず、人手不足になり、その結果、農作業の機械化が進む。

*ワタミは派遣会社を買収し、社員を人手不足の企業に派遣することを始めた。みずほ銀行は、給料を減らす代わりに週休3日や4日を認めるなど、人事制度を変えようとしている。専門家は「コロナの感染拡大が日本の硬直した雇用制度を半ば強制的に変えようとしている。今後、兼業や副業は当たり前になるだろう」と指摘している。

*異業種への派遣なども。航空機の点検をしていた日本航空の子会社は社員を空港近くの農業法人や農家に派遣。

2021年3月13日付
冨山和彦氏へのインタビュー記事「地方へ人材 日本成長の鍵」の中で、次の発言。「大企業で余剰人員とされた人々が、決して能力で劣っているわけではなく、経験を生かして地方で輝ける余地は十分にある」と。

●uttiiの眼

仕事がないのに雇い続けるのは無理だ…という理屈は正しいように見えるかもしれない。配置転換や社外への派遣などの知恵を出し、政府の雇用調整助成金の特例などを使って、働き手の収入を確保しようとする経営側の努力は、どの記事でも称賛されている。

それらを否定するつもりもないが、しかし、企業ができる自前の努力の中には、内部留保の形で溜め込んだ現金の、賃金への放出が含まれて然るべきだ。コロナ前にいったん盛り上がった議論の中では、30兆円の現金を放出する力があるとの推計も出されていた。

《読売》はきょうの記事のなかで、「仕事が少なくなったにもかかわらず、多くの雇用を維持している」と日本の企業を評価している。その経営側の努力の中に、「内部留保の放出」は含まれているのだろうか。

今朝の《読売》記事には、「日本企業が、仕事がないのに雇用を維持できているのは何故なのか」という問いに対する答えが、十分には用意されていないと言わざるを得ない。

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ニュースステーションを皮切りにテレビの世界に入って34年。サンデープロジェクト(テレビ朝日)で数々の取材とリポートに携わり、スーパーニュース・アンカー(関西テレビ)や吉田照美ソコダイジナトコ(文化放送)でコメンテーター、J-WAVEのジャム・ザ・ワールドではナビゲーターを務めた。ネット上のメディア、『デモクラTV』の創立メンバーで、自身が司会を務める「デモくらジオ」(金曜夜8時から10時。「ヴィンテージ・ジャズをアナログ・プレーヤーで聴きながら、リラックスして一週間を振り返る名物プログラム」)は番組開始以来、放送300回を超えた。

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【著者】 内田誠 【月額】 月額330円(税込) 【発行周期】 週1回程度

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