知性の欠如も安倍前首相ゆずり。「まん防」菅政権のドロ船が沈没する日

 

「まん防」というユルキャラでも登場するのか?

話を戻して、この没戦略性ゆえに、せっかくの緊急事態宣言にもかかわらず何が達成でき、あるいはできなかったのかを総括することができず、従って次にそれを発動するかしないかを決めるにもその理知的な基準が分からない。とはいえ、もう一度緊急事態宣言に戻るのは気分的に余りにも辛いので、一段緩そうに見える「まん延防止等重点措置」を新設して、それで国民に目眩しをかけようというわけである。

これまでも再三述べてきたことだが、菅の頭の中は、今年9月の自民党総裁選で何としても再選を果たし、自分の下で10月総選挙を戦って勝ち抜き、長期とまではいかなくとも中期政権への道を拓きたいという希望的観測で充満している。そこから逆算すると、7~8月の東京五輪を開催しないという選択はあり得ない。中止であれば総裁再選の可能性はゼロであるのに対し、どんな形であれ開催出来さえすれば再選の可能性が僅か数%であっても残るからである。

何としても五輪開催に漕ぎ着けるには、3月25日に予定通り聖火リレーがスタートしていることが致命的に重要で、それがスタートさえしていれば「聖火リレーで五輪はもう事実上始まっているのに今更止めるわけにはいかない」と、何が何でも開催強行に繋げる有力な理由となり得る。リレーが始められなければ、その時点ですでに五輪は壊滅状態に陥ることが見えていた。

だから、何がどうなろうとその前の3月21日には首都圏1都3県の緊急事態宣言が解除されていなければならず、それで晴れてリレーが始まって、7月23日の開会式まで何事もなく続けばそれに越したことはないが、また感染が拡大して緊急事態宣言に戻るようなことだけは決してあってはならず、そのため、相当酷いことになっても「まだ緊急事態宣言は必要なく、その前段のまん延防止等重点措置で済ませられる」と強弁できるような舞台装置を用意したのである。

つまり、3度目の緊急事態宣言を発し、「やっぱり五輪開催は無理かなあ」という議論になることだけは絶対に回避するという菅の前のめりの“覚悟”だけは見えるのだが、国民の側からすれば緊急事態宣言とこれとの何がどう違うのかは明らかでなく、ただ単に「少しは外出してもいいらしい」という緩み感覚しかメッセージとして伝わってこない。

そこへもってきて、政府関係者が当初「まん防」などとニックネームで呼び、北杜夫の「どくとるマンボウ」のあののどかな気分を連想させるような全く緊張感を欠いた発表の仕方になったことも禍し、せっかく大阪府などにそれが発動されることになっても、少なくとも全国的には何の心理的歯止め効果も持たなかった。それどころか、そのうち「ハーイ、国民の皆さ~ん、『まん防』くんでーす」などというユルキャラがテレビに出てくるのではないかと不安になるほどだったが、さすがにこのニックネームが不謹慎だということで政府内で封印されたようだ。

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