先日掲載の「中国の動きを今すぐに止めろ。欧米がアジアへ『海軍』を送る訳」では、欧米の大国がなぜここまで中国を警戒するのかについて解説した、国際関係ジャーナリストの北野幸伯さん。今回北野さんは自身の無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』で、リアリズムの視点から中国の現状を分析するとともに、習近平政権にかならず訪れるであろう「彼らにとって受け入れがたい未来」を大胆に予測しています。
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リアリズムから見る中国情勢の現状と未来
今日は、「リアリズム」の視点から、中国の現状と未来を考えてみましょう。
まず、理想主義と現実主義(リアリズム)の違いを復習しておきましょう。
理想主義者は、「国際機関」「国際法」「経済の相互依存」などを強めることで、「戦争を回避できる」と考えます。
しかし、リアリストは、「国際機関、国際法、経済の相互依存では戦争は防げない」と考えます。
実際、最大の国際機関=国連は、機能不全になっています。なぜでしょうか?
国連安保理には、拒否権をもつ5大国がいる(米英仏ロ中)。そして、米英と中ロの意見がいつも対立する。それで、安保理の方針がなかなか打ち出せないのです。実際、中ロが北朝鮮を守らなければ、北の核問題はとっくに解決していたでしょう。
では、リアリストは、「どうすれば戦争は回避できる」と考えるのでしょうか?「バランスオブパワー(勢力均衡)を維持することで回避できる」と考えるのです。
バランスオブパワーが崩れる時
ところが、ある国が急激に成長し、「バランスオブパワー」が崩れる時があります。たとえば、19世紀のはじめ、フランスの軍神ナポレオンは、大陸欧州のほとんどを支配しました。たとえば、20世紀、ドイツ帝国とナチスドイツは、欧州ばかりか世界支配を目指しました。第2次大戦後、ソ連は東欧全土を支配し、革命を中国、北朝鮮、そして全世界に輸出していきました。そして今、アジアを見るに、中国がパランスオブパワーを壊す存在になっている。
中国は、アジアNo.2の日本と比べると、GDPで約3倍、軍事費で約5.5倍になっている(GDPについては、統計が信用できないという問題はありますが)。しかも、ジャイアン並にアグレッシブです。哲学は、「おまえの物は俺の物、俺の物も俺の物」。たとえば、「南シナ海は全部俺の物」「尖閣だけでなく沖縄も俺の物」。
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というわけで、今の中国は、「アジアのバランスオブパワーを破壊するやっかいな存在」なのです。あたかも、ナポレオンのフランス、ドイツ帝国、ナチスドイツ、ソ連の如く。