中国と“全面衝突”は不可避か。G7首脳宣言に「台湾明記」の大バクチ

 

台湾海峡を舞台にした軍事的な全面衝突の可能性も

これから英国で開催されるG7サミット国とその仲間たちは、その拡大する中国による脅威に対抗すべく結束を固める方針のようですが、このギャンブルともいえるハンドリングは、インド太平洋地域および東アジアにおける米中両陣営による覇権争いの激化を招いているように思います。

特に習近平国家主席がこだわる【台湾へのコミットメントの明記】は中国政府のレッドラインを超え、おそらく米中間の対立構造をG7各国にも広げるPoint of No Return(引き返せないポイント)となるのではないかと恐れています。

中国政府の拡大路線(軍事・経済・情報など)は、経済指標で示されている【コロナ禍からの回復】では示すことが出来ていない、中国覇権主義の自転車操業的な拡大がもたらす様々な綻びを、近いうちに表面化させることになるかもしれません。

もしそうなったら、中国政府を追い込み、結果として暴発を招き、台湾海峡を舞台にした軍事的な全面衝突の火ぶたが切って落とされる可能性が高まるでしょう。

その際、これから表明しようとしているG7の対中結束、QUADの拡大と強化、そして経済的な中国離れにおける陣営の結束をどこまで保つことが出来るのか?

または、中国が仕掛ける揺さぶりに屈するようなことになるのか?

その際のカギを握るのは、ASEAN諸国の態度かもしれません。ミャンマー情勢への対応を見てもわかるように、非常に実利主義の傾向が強く、これまでの歴史的な問題への反動と教訓から、自分たちの利益になることを最優先に、ケースバイケースでの対応を選択しがちですので、結局、どちらの味方かわからないという状態になるかもしれません。

または、最近強まる中国からの軍事的な威嚇に業を煮やして、本格的に中国との距離を置き、対中包囲網への何らかの参加もオプションに入ってくるかもしれません。この場合、これまであまりアテにならなかった日米欧からの経済的なコミットメントが得られることがとても重要になりますが…。

そして、ASEANとは違った意味で、結束の強度を試しそうなのが、韓国の存在と揺さぶりです。

今回のG7サミットにはゲストとして招待されていますが、シェルパ会議および準備会合時点から、日本への批判を持ち込んだり、空約束をしてみたりして、議長国英国を激怒させたという情報もあります。また、米韓首脳会談を“成功”と発表していますが、アメリカ政府側の認識は異なるようです。

先週号でも触れましたが、G7各国と豪州などの対韓国共通認識は、【すでに韓国政府は中国に首根っこをつかまれ、Red Team入りしており、too muchな韓国のG7サイドへの接近は、ただの中国のエージェントにすぎない】との内容があります。

ゆえに、先週号でも申し上げましたが、今後、対中包囲網を強化する際に、QUADなどには韓国を入れてはいけないというのが共通認識になりつつあると聞いています。そのような状況下で、今回のサミットにおいて、どのようなふるまいを見せるのか非常に注目しています。

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