都議選「小池劇場」にダマされるな。日本の政治制度に“5つの問題点”

 

最大の問題点は、都民ファーストの会として「五輪の無観客開催」を公約として掲げていたことでした。仮に小池氏が選挙運動に全面的に関与していれば、これを主張することで、自公政権との軋轢が増したでしょう。ですが、小池氏は静養することで結果的にこれを回避することができました。一方で、それでも都民ファーストの会が「無観客」を公約にしていて、しかも善戦したことで結果的に五輪が無観客で開催されたとすれば、小池氏にはプラスになります。

自公政権のメンツは立てつつ、自分だけ政治的ポイントを稼ぐというウルトラCが結果的に成立する可能性があるわけです。それ以前の問題として、この間、ずっと知事としての公務を継続していれば、デルタ株による感染拡大で毎日600から700という新規陽性者の数字と向き合わねばなりません。これも、静養することで回避できています。

つまり、コロナ対策も五輪問題も、うまく「かわし」ながら自らの政治的影響力の誇示には成功したわけで、こうなるとその辣腕ぶりと言いますか、運の強さのようなことに期待が集まるのも不思議ではないことになります。

そのため、オリンピック、パラリンピック終了後に予定されている総選挙においては、知事を辞職して自民党から衆院選に出馬し、次期総理総裁を狙う可能性が取り沙汰されています。具体的には、以前の地盤であった東京10区(新宿、中野、豊島、練馬のそれぞれ一部)ではなく、その隣の9区(練馬の大部分)の議員辞職した菅原一秀の議席を狙っているという説があります。

小池氏とすれば、前回2017年の総選挙では「希望の党」を立ち上げ、旧民進党の勢力を一気に奪って旋風を巻き起こそうとしたわけですが、惨敗して国政進出はゼロに戻ってしまった経験があります。

ちなみに「希望の党」の失敗は、若狭勝氏を「顔」とした人選の失敗もありますが、それはともかく、

  1. 民進党イコール反自民勢力といことで、その中には護憲一国平和の勢力が相当に入っていた。これを無力化する戦略を取らず、顕在化して切り捨てるというのは余りにも無茶で、票も一緒に逃げてしまった
  2. 大阪維新が、選挙には強くても都構想の住民投票になると逃げられるのと一緒で、世論は維新や都民ファについては「既得権益の壊し屋」として使い捨てるというのが本音で、都構想や国政変革など期待していない、という冷静な見方ができなかった

という2点によるわけですが、そこは政治の鬼である小池氏は、しっかり「修正」してきており、今回は、二階派を巧妙に使って自民党ジャックという作戦に変更してきているのかもしれません。

少々無責任な政治講談を続けてしまいました。とにかく、物語としては面白いわけですが、まずもって都議選の総評としては情けない話でしかありません。冷静に考えてみれば、政策決定としては何も決まらなかったからです。

オリ・パラ開催に関する民意は曖昧でした。確かに五輪の無観客開催を主張した都民ファーストの善戦という事実はありますが、開催都市として世論が断を下したわけではありません。またコロナ対策への審判があったわけでもありません。

まして、コロナ給付金の支払いで急速に悪化した都財政への対策が選択されたわけでもないし、急増する東京の高齢単身世帯への対処、子育て体制の拡充などの具体的な争点に民意が反応したわけでもありませんでした。

選挙戦の終盤には、静岡県熱海市から線状降水帯による悲惨な土砂災害のニュースが飛び込んできましたが、荒川氾濫に備えた防災体制など喫緊の課題についての判断もされなかったのです。

特に荒川氾濫の危険性については、2019年10月の「台風19号」に際しては、荒川の危険水位7.7メートルに対して、実際の水位が7.1まで上昇、間一髪であったことが伝えられています。こうした問題について、争点として複数の政策が提案され、選挙によって民意を得るということは絶対に必要であると思いますが、今回もダメでした。

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