■親の勝手な押しつけは、子どもには「大迷惑」
親が好きなこと、かつてやっていたこと、得意なことを子どもに習わせるのは、親が直接指導できる点でメリットがある。子どももその気になり、本人に向いているのであれば、うまくいくだろう。
しかし、「自分がプロ野球に行けなかった夢を子どもに託したい」とか「将来はプロゴルファーになってほしい」などと、勝手に子どもの将来をイメージして強制的にやらせることは危険だ。成功する例はほんの一握りだし、うまくいかなくて親子関係まで崩壊してしまう例が少なくない。これが3つめのポイントだ。
いちばん大切なことは、子どもの気持ちと、向き不向きである。絵の大好きな子どもに対して父親が自分の得意な野球を強制し、絵を描くことを禁止した結果、修復不可能なほど親子関係が壊れてしまったケースも見た。
「親の押しつけ」「兄妹や友だちがやっているから」「子どもの苦手を克服する」などの理由で習い事を選ぶと、うまくいかない場合がある。たとえば、おとなしいから武道で鍛えてやろうと思っても、本人に向いていなければ良くない影響を与える。
親が「我が子のため」と思っても、子ども側からすれば「大きな迷惑」なことは多い。ときに、それは一種の暴力ですらある。親が強権を発動すれば、子どもは逆らえない。しかし、子どもの心には不満と反抗心が育つ。
もちろん、親が子どもの性格や適性を見て、説得することはあっていい。しかし、説得が強制になってしまうことが多いので、親は厳に自らを戒めなければならない。
たとえば、お父さんがかつて学生時代に打ち込んでいたバレーボールのすばらしさを子どもにも体験させたいと思っていていも、子どもはスポーツより絵に興味があるという場合などでは、(子どもが納得すれば)両方を同時にやる方法もある。
この場合でも無理強いはいけない。1度に2つ始めるのは、子どもにとって負担が大きいので、慎重に対応する必要がある。
初出「親力養成講座」日経BP 2009年5月13日
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