自民党総裁選が炙り出した、逃げれば「日本破綻」レベルの大問題

 

立憲民主の主導した野党3党の合意というのがあるというので、まさか国民民主も巻き込んだのかと思ったら、立憲+共産+社民だというので腰が抜けましたが、その中身もボロボロでした。「科学的知見に基づくコロナ対策」というのは、徹底鎖国と、徹底人流抑止をズブズブの補償金垂れ流しで実現し、しかもワクチン忌避の支持者に配慮するという超非科学的なファンタジーに過ぎません。

モリ・カケ・サクラを叩くのは結構ですが、じゃあオリパラの招致贈賄問題、巨額の赤字問題はスルーなのでしょうか。驚愕したのは、辺野古を否定して、普天間の「県外移転」をいうのではなく、「普天間から辺野古への移設中止」などと言っている事で全く意味不明です。沖縄を馬鹿にしているとしか言いようがありません。

そんなわけで、個々の候補や政党の「セール品」には全く魅力はないわけですが、その一方で、非常に深刻な2つの点において対立軸が浮上してきているのも事実です。

1つは、エネルギー政策におけるエナジー・ミックス問題です。こちらは政局における論争は低調なようです。野党3党が惰性で「脱原発」を言っている程度ですが、そんな中で、どうやらコンビを組みつつある河野太郎氏と小泉進次郎氏は、菅総理の排出ガスゼロ化政策を継承すると見られているわけです。

例えば、河野氏は、再生可能エネルギーの比率アップに強い執念を見せており、反対派から「パワハラ」という誹謗中傷を受けるほどでした。小泉氏は本来は環境相である自分の責任課題であったはずの原発処理水の排出問題では、「自分で宿題をやることができず」に、菅総理が泥をかぶってくれた格好です。そのために、辛うじて環境の小泉というブランドイメージを守っています。

ですから、まるで2001年に田中真紀子ブームに乗って、小泉純一郎政権が起動したように、河野+小泉のコンビというのは相当に強力になる可能性があり、そこには「デジタル化などの構造改革」に加えて、「排出ガスゼロ」そして「原発ゼロ」という期待が巨大な感情論として上乗せされた構図が出てくると考えられます。

ですが、このまま原発の稼働を増やさずに進むのでは、日本の電力需要は支えられないし、当面の排出ガス削減はできません。例えば、河野氏が反対派によって「槍玉に挙げられた」件として、「2030年に総発電量のうち、再生可能エネルギーの比率を「36~38%『程度』」とするのか、「38%以上」にするのかという禅問答がありました。

河野氏は「以上」を主張して、「程度」という表現で曖昧化を狙った官僚と喧嘩になったわけです。表面的には河野氏が正しいように見えますが、仮に強引に38%とする一方で、原発比率は上げられないということになりますと、分母、つまり2030年の「総発電量」を下げるという話になります。これは、日本経済にとっては大変に危険なシナリオです。

かといって、官僚が「程度」で逃げようとしているように、再生可能エネルギーの比率は無理に高めるのではなく、けれども原発稼働は最小限ということになると、結局は2030年まで化石燃料をモクモク焚いて世界の悪者になるしかありません。

そうなれば、トヨタの豊田章男社長が明言しているように、日本国内では自動車が作れなくなります。いくらトヨタがEVにシフトして、良い製品を作っても、日本国内のエネルギーが「汚れて」いては競争力は消えるからです。また製鉄など他の日本の重要産業も成立しなくなります。

何度も申し上げているように、仮に、製造業を諦めて知的な省エネ経済にシフトするにしても、現在の中進国仕様の教育改革には時間がかかります。ですから当面の10年間、国が破綻せずに改革を進めるには期限を切っての原発稼働は避けられません。

この点に関しては、一つの期待があります。それは、反原発派と思われている河野、小泉コンビが「2050年全面廃炉」を掲げて支持を得る、つまり、裏返すと、その代わりにそれまでの稼働の許可を世論から取りつけるというシナリオが期待されます。この両人にそこまでの決意と能力があるかは未知数です。しかしながら、彼らを含めて、この問題の争点化から逃げるようなら日本は破滅の道を歩むことになります。

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