立川談志の名言通り。「タブレットが教育をダメにする」の大ウソ

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文科省が推進する「GIGAスクール構想」において、一人「悪者」にされている観のあるタブレット端末。果たしてそれは真実と言えるのでしょうか。今回の無料メルマガ『「二十代で身につけたい!」教育観と仕事術』では著者で現役小学校教諭の松尾英明さんが、今は亡き落語家・立川談志師匠の名言を引き合いに、その真偽を考察しています。

【関連】「GIGAスクール構想」のタブレットは子どもに悪影響を与えないのか?

「二十代で身につけたい!」教育観と仕事術 mag2 0001211150 2021/9/28

GIGAスクール構想以前 学校教育の本質的な問題を捉える

学級づくり修養会「HOPE」での学び。

子どもの扱うタブレット端末の難しさについて話し合った。するとメンバーの一人から、次のような意見が出た。

落語家である故・立川談志師匠の名言に「酒が人をダメにするんじゃない。人間はもともとダメだということを教えてくれるもんだ」がある。

つまりこの教えにならえば、タブレット端末が教育をダメにするのではない。今の教育のダメな面、至らない点をタブレット端末が教えてくれているだけではないか。そのように考えようというのである。

この意見にはメンバー一同「目から鱗が落ちる」という思いだった。毎回終了後に「今日一番の学び」というのをそれぞれ投稿するのだが、この言葉が最も印象に残ったようである。

なるほど、そのように見ていけば、今起きている問題を単純にタブレット端末その他のせいにするのは間違っている。教育現場の本質的な問題が浮き彫りになっていると考えればいい。そう考えれば、問題がはっきり見えるということを逆手にとって、そこからアプローチすればいいとわかる。

例えばICTを用いたオンライン授業を行うと、普段の教室で起きるのと同じような問題が浮上してくる。遠隔でオンライン授業をする際、子どもが家にいるとはいえ、あくまでも授業中である。子どもの姿が端末画面に見えているのだが、しばらくすると明らかに姿勢が崩れていく子どもが出る。

この現象に対し「教室だと指導できるのに」「家だと気が抜けてリラックスしすぎる」「パソコンを使うと姿勢が崩れる」と嘆いても意味がない。

姿勢が崩れるという現象は、あくまでも目に見える現象である。目に見えない部分、その本質は別にある。普段から立腰に対する意味付けや指導ができておらず、子どもに適切な筋力を育てられていない証拠である。

もっと重いものだと、端末を用いたいじめ問題が起きた場合が考えられる。端末を安易に悪用されない工夫は確実に必要である。一方で、これは端末によって、潜っていた問題が表出化したともいえる。端末どうこう以前の本質的な問題があったと考える方が妥当である。

いじめが既に見えていて解決していないのであれば、その状態で端末を自由に使えるように渡すのは愚行である。いじめ問題の解決が優先事項であり、端末に対しては制御を大きくかけて厳しく管理する必要が出る。

問題の本質を外さない。GIGAスクール構想自体の問題点が指摘されやすい。しかし本質的には、そこではなく学校教育自体が大きな問題を抱えているという証拠である。

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【著者】 松尾英明 【発行周期】 2日に1回ずつ発行します。

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