山本氏の8区出馬について記者から質問された枝野氏は「率直に言って戸惑っている」「できれば避けていただきたい」と語った。まるで、山本氏が勝手に暴走しているかのようだ。山本氏との会談における「やり取りしていると言うにとどめる」との約束は守られなかった。
山本氏は追い込まれた。以下のような報道はとりわけ骨身にこたえた。
一部の立憲幹部が山本氏への一本化で動いていた点についても、「市民の声に耳を傾けず、(立憲の)女性候補を降ろすのであれば、ボトムアップやパリテ(男女同数)を掲げてきた立憲のあり方を考え直さないといけない」と厳しい批判が相次いだ。女性の参加者からは「これはパワハラ。断じて許せない」という意見が出た。
(朝日新聞)
10月11日、横浜・日吉駅前における街頭演説で、山本氏は東京8区での立候補を取り下げる理由を概ね以下のように語った。
「東京8区でという話は2019年11月29日に立憲民主党からいただいた。共闘を決意したのは、5%への時限的消費減税を枝野代表が打ち出して以降のこと。東京8区への出馬で話は決まっていたが、立憲の支持者への説明があまりなされていなかった。枝野さんは約束と違う発言が日に日に大きくなり、まるでエイリアンがやってきたという感じになった。これを解決し共闘を前に進めるには私が8区を降りるのが一番早いと思った」
批判を恐れるためか腹を括って説得しようとしない枝野氏への苛立ちをぶつけるかのような出馬撤回の弁だった。
このような場合、調整が極めて難しいのは間違いないが、立憲の党内マネジメントや代表のリーダーシップには、いささか不安を覚える。
この件で、れいわ新選組、立憲民主党ともに深い傷を負った。野党共闘そのものがダメージを受けた。大同団結して議席を増やさなければ、野党は弱いままだ。野党が弱い政治は、与党の堕落と、政権の腐敗を招く。
山本氏はどうするつもりなのか。選挙区を変えてこの衆院選に出ると明言しているが、告示日は迫っている。
今回、財政再建より景気上昇を優先させるべく野党各党が共通して掲げた「消費税率5%」への減税公約は、山本氏らでつくる政策勉強グループ「消費税減税研究会」が各党に提言して実現した。
当初、立憲の枝野代表は消費減税に抵抗感があったようである。それはそうだろう。民主党政権時代の菅内閣が2010年6月、参院選直前に「消費税10%」を打ち出し、選挙に惨敗したさいの民主党幹事長である。
それでも今回、衆院選が迫るにつれ、消費税減税を野党結集の軸にすべきだという党内外の声が高まり、それに押されて、しぶしぶながらも採用したのだ。集団で戦う時には、個々の思いを封印することも必要だ。
枝野氏には大きな観点、冷徹な戦略、そして太い肝っ玉を持ってもらいたい。野党の結集で政権交代可能な連合体をつくることこそが、この国に真の民主主義を根づかせるため、野党第一党の党首が果たすべき役割である。
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image by: MAG2 NEWS