整理しておくなら、中国は2049年の建国100周年に米国に追いつき、追い越すという国家目標の実現に向けて、途中で転んだりつまずいたりする訳にはいきませんから、いわば安全運転中の状態なのです。居丈高な戦狼外交を前面に打ち出しているのは、その裏返しの面があるのです。
そして、軍事力がハイテク化するほどに重要性を増していくデータ中継衛星などの軍事インフラの整備が遅れており、いくら空母、ステルス戦闘機、対艦ミサイル、極超音速滑空兵器などを出してきても、使えない状態にあります。中国共産党の内部文書が「近代戦を戦えない」と繰り返し述べているそのままの状態にあるのです。
台湾有事にしても、台湾海峡上空で航空優勢(制空権)をとる能力に欠け、台湾に上陸侵攻して占領するために必要な陸上戦力約100万人を輸送する船舶もなく、一度に1万人規模の部隊を投入できるだけにすぎません。
テレビ朝日で解説していた新聞記者は、以上のようなリアリズムに基づく軍事問題の見方や海上輸送に必要な計算式の存在など知らないことは明らかでした。
経歴をみると中国人民大学に留学し、ハーバード大学中国研究所の客員研究員を経て中国総局とアメリカ総局に勤務し、2011年には中国の安全保障政策や情報政策に関する報道によってボーン・上田記念国際記者賞を受賞しています。朝日新聞のエース記者の一人です。安全保障だけでなく中国全体について豊富な知識を備えているし、ルックスはいい。喋りもうまい。このままいくとニュースキャスターの有力候補とみなされていることも明らかです。影響力は小さくありません。
だからこそ、知っていることを立て板に水で羅列するのではなく、もう一歩踏み込んだ勉強をしてジャーナリストとしての使命を果たしてもらいたいと思うのです。(小川和久)
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