「オミクロン株の危険性」ばかり強調するマスコミを疑え。上昌広医師が緊急提言

2022.01.14
by 上昌広
 

日常生活の継続

オミクロン株対策として、最後に挙げたいのは、従来通りの日常生活を送ることの重要性だ。

あまり議論されることはないが、規制強化は経済面だけでなく、健康にも悪影響を及ぼす。高齢化が進んだ日本では、その影響は深刻だ。実は、コロナ流行下で日本での死亡数は増加している。医療ガバナンス研究所の山下えりかの調査によれば、2017~19年の死亡数と比較し、2020、21年の5月は、1.25倍、1.37倍、8月は1.29倍、1.35倍、更に2021年の1月には1.19倍死亡者数が増えていた。コロナが流行する度に死亡が増加していることがわかる。この増加は自然変動では説明がつかず、国立感染症研究所は「超過死亡」を認定している。「超過死亡」はコロナ感染による死亡が増えたためではない。2021年1月には過去3年間と比べて、2万4,748人死者が増えているが、この時期にコロナによる死亡が認定されたのは、2,261人に過ぎない。コロナの流行時期に合わせて、多数のコロナ関連死が生じていたと考えるのが妥当だ。

12月24日、スポーツ庁は全国の小学5年生と中学2年生を対象とした2021年度の全国体力テストで、男女とも全8種目の合計点の平均値が調査開始以来最低であったと発表した。

小中学生の体力がこれだけ落ちるのだから、高齢者の健康が害されるのも宜なるかだ。今回のオミクロン株での規制強化でも、多くの高齢者の命が失われるだろう。

最後に

オミクロン株対策は合理的でなければならない。海外の経験からもっと学ぶべきだ。

オミクロン株の流行は、南アフリカだけでなく、英国、ギリシャなどでもピークアウトしている。感染拡大から1ヶ月程度で収束に転じたことになる。日本も同様の展開を辿るだろう。ちなみに昨年の冬の流行のピークは1月11日だった。日本でのオミクロン株の流行が欧米レベルまで拡大する可能性は低い。大騒ぎせず、冷静に科学的に議論すべきである。

 

上 昌広(かみ まさひろ)
医療ガバナンス研究所理事長。1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。

image by: Ned Snowman / Shutterstock.com

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