「中国当局に情報を抜かれる」北京五輪の出場選手に通達が出た異常事態

 

ボイス・オブ・アメリカによれば、IOCは中国と交渉し、五輪に参加する外国人選手団や取材陣が選手村や競技場で自由にインターネットサービスが利用できるよう約束を取り付けたそうです。

しかし、これらのインターネットも、もちろん中国が監視しています。また、そのインターネット網を利用してウイルスやマルウェアを機器に送り込み、写真や情報を盗み出すことも可能です。ワシントンの人権機構フリーダムハウスのアンジェリ・ダット中国担当上級研究員は、「中国が提供する無線インターネットを利用するのは一種の冒険」とし、簡単に中国当局の監視を受けかねないと警告しました(前述の中央日報)。

スマートフォンやノートパソコンに不正プログラムを送りつけられ、それをうっかり開いてしまったことで、機器を乗っ取られ、遠隔操作によって知らぬ間にスマホやノートパソコンのカメラやマイクが操作されて、盗撮・盗聴される危険性も少なくありません。

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最近のスマートフォンには、エクササイズの履歴や体調管理のソフトも入っているので、そういったものを活用している選手なら、体の状態までも中国側に抜き取られる可能性があります。それらのデータやコーチとの作戦会議の会話まで盗まれる可能性があるのです。

もともと中国は冬季オリンピックはそれほど強くなく、前回の平昌五輪では金メダルは1個、メダル獲得数9個で16位でした。これが急上昇するようなら、ちょっと疑わしい目で見てしまいます。その前のソチ五輪では、ロシアは大量の金メダルを獲得しましたが、組織的なドーピングが発覚し、東京と北京五輪から除外されました。

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もちろん、インターネット接続のみならず、中国国内で通話することも危険です。衛星回線でなければ、中国現地の通信会社を通して通話することになるでしょうが、そうなると、会話はすべて盗聴される可能性が高いからです。

すでに携帯電話の通信傍受など、中国当局にとっては当たり前のようにやっています。ニューヨーク・タイムズは、アメリカのセキュリティー会社の分析として、中国当局は2013年からウイグル人に対する通信傍受によって多くの個人情報を収集し続けていることを報じています。

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2013年といえば、習近平が総書記、国家主席に就任した直後です。そして以後、習近平への権力集中とともに、異常なほど情報統制や人民への監視が強まっていったわけです。

香港の民主化運動を主導して「民主の女神」と呼ばれた周庭氏も、中国からの盗聴は日常茶飯事だと話していました。その周庭氏は、2020年6月に香港国家安全維持法が施行されると、2019年のデモを扇動したとして逮捕され、禁錮10カ月の実刑判決を受けました。2021年6月に釈放されましたが、現在も当局の監視下にあります。

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民主化運動に参加した香港人は、続々と海外に脱出しましたが、それでも、中国当局による盗聴や尾行におびえています。

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このような実態があるわけですから、これで北京五輪でのインターネットや電話での会話が盗聴・情報抜き取りをされないと考えるほうが、どうかしています。

そのため、外国人選手やスタッフは、公的な場所はもちろん、インターネットやスマートフォンでの会話にも細心の注意を払わなくてはなりません。うっかり習近平体制の批判や、台湾独立支持の話でもしようものなら、ブラックリストに載せられる可能性が高いのです。

もちろん北京五輪の際にいきなり逮捕・拘束される可能性は低いでしょうが、数カ月後、数年後に中国を再訪したときなどに捕まる可能性も否定できません。

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