客単価が千円もUP。話題のイタリアン食堂「東京MEAT酒場」は何を変えたのか?

 

“おじさん系”大衆居酒屋をリブランディングする

このように斬新な売り方を展開するイタリアンイノベーション(以下、IIC)では2021年5月にプロパーの青木秀一氏が取締役社長に就任した。

イタリアンイノベーションクッチーナ取締役社長の青木秀一氏

イタリアンイノベーションクッチーナ取締役社長の青木秀一氏

青木氏は1982年9月生まれ。2001年に当時2店舗の同社に入社する。将来、飲食店で独立することを目標にしていた青木氏はたちまち頭角を現し実績をつくっていく。「日本一おいしいミートソース」のクオリティアップにも大きく貢献した。独立起業を決意したタイミングで代表の四家氏から「一緒に面白いことをやろう」と言われて経営陣に就き、さまざまな分野の改革を推進してきた。

これらの中で、青木氏は「東京MEAT酒場」のリニューアルとリブランディングの必要性を感じるようになっていた。その理由について青木氏はこのように語る。

まず、店のクオリティを維持向上させる視点から。

「団体の宴会がなくなる中で少人数のお客様に利用してもらえるような店にする。食材が高騰していくことから客単価2,800円のレベルでは食材や調味料にこだわることができない。当社の理念は、お客様と末永くお付き合いするために健康的な食材にこだわるというもので、これに反することはしたくない。この点には妥協しない」

次に、労働環境の視点から。

「当社の従業員が若くなる傾向にあって、以前の業態の当時、異動があると『あの店に行きたくない』という声があった。店は働く人がプライドを持って働くことが重要だ。従業員が働きたいと思わないとお客様に伝わらない」

リブランディングしてからかつての常連客が再来店

では、リブランディングではどのようなことを行ったか。ここでは2月にリニューアルオープンした「浅草総本店」の事例を中心に紹介しよう。

ハードのリニューアルは、まず、女性客、お一人様。ノンアルコールの人も入りやすいファサードにした。店内はオープンキッチンにして調理風景をライブ感あふれるものにして、フラットカウンターにすることで従業員とお客との会話が弾むようにした。居心地のいい雰囲気をつくることによって滞在時間が長くなるようにした。

メニューは、単品価格380円、480円(税込、以下同)の小皿料理を増やした。

リブランディングした「イタリアン食堂 東京MEAT酒場」メニュー全般のイメージ

リブランディングした「イタリアン食堂 東京MEAT酒場」メニュー全般のイメージ

「おすすめメニュー」として、同社が得意とするパスタを“おつまみ”として利用してもらう「お酒のアテパスタ」をラインアップした。通常のパスタメニューのハーフサイズで、具体的には「カツオ出汁香る。濃厚和風カルボナーラ」680円、「生ウニとイクラのトマトクリーム」980円、「旨辛麻婆アラビアータonふあふあチーズ」680円となっている。

おつまみパスタの一例「カツオ出汁香る。濃厚和風カルボナーラ」680円

おつまみパスタの一例「カツオ出汁香る。濃厚和風カルボナーラ」680円

和の大衆業態では串料理が定番となっているが、同ブランドでは、カダイフ(小麦粉やトウモロコシ粉を原料とした極細麺状の生地)を用いた串の揚げ物をラインアップした。パン粉で揚げたものと比べて、サクサク感、パリパリ感がはっきりとして食感が新鮮である。具体的には「ホクホク染み大根のパリパリ揚げ ポルチーニソース」1本280円、「ラム肉とオリーブのパリパリ揚げ サルサトマト」380円、「カマンベールとトマトのパリパリ揚げ バルサミコ味噌ソース」350円などが挙げられる。

これらのリニューアルによって、客単価が“おじさん系”当時2,800円だったものが、“イタリアン食堂”となってから3,800円となった。

「東京MEAT酒場」のリブランディングによって顕在化した現象として、かつての常連客が「リニューアルしたと聞いて楽しみにしていた」という来店の事例が増えてきたことが挙げられる。これは従業員のモチベーションを高めることであろう。ちなみに2022年3月末現在、カジュアルイタリアンは11店舗、イタリアン食堂は5店舗となっている。

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