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従業員が一体となりシードルづくりを体験

さらに、この度オリジナルクラフトシードルの醸造に着手した。

それは、同社と取引のある生産者からの相談がきっかけとなった。その内容は、規格外のリンゴの活用について。長野の農園で月間3tが出てくるこれらのリンゴをなんとできないか、ということだった。

そこでひらめいたのがリンゴを使用したスパークリングワインの“シードル”を醸造することであった。

そのために、リンゴの生産者である長野県飯綱町の「丸西農園」と、同じエリアにある醸造所の「林檎学校醸造所」を紹介してもらった。こうして、生産者、醸造所、IICの3社によるオリジナルクラフトシードルをつくる合同事業が昨年12月に始まった。IICの総コストは材料費込みで40万円とのこと。

従業員と一緒に規格外のリンゴでシードルをつくり商品化した

従業員と一緒に規格外のリンゴでシードルをつくり商品化した

この事業では、オリジナルクラフトシードルを290本醸造した(1本720ml)。名称はイタリア語で“再生”を意味する「rinato(リナート)」。価格は1本3,900円(税込)。店内で飲む時も、ボトルを購入して持ち帰る場合もこの価格で販売した。2月18日よりIICの各店舗で発売を開始したところ3月上旬でほぼ完売した。

この活動を振り返って青木氏はこう語る。

「まず、社会課題である食材ロスの対策となっている。当社従業員の教育機会にもなっている。みんなで現地に行って様子を見て、みんなでシードルをつくった。だから、当社の従業員はそのストーリーをお客様にしっかりと伝えることができる。今後この活動をシリーズ化しようと考えている」

このようにIICでは、自店のアピールと経営の安定に余念がなく、従業員本位で事業を推進してきた。特にシードル醸造の顛末は社会課題の解決である。このような飲食業は持続可能な経営の感覚を身に着けていると言えるだろう。

image by: 千葉哲幸
協力:㈱カロスエンターテイメント

千葉哲幸

プロフィール:千葉哲幸(ちば・てつゆき)フードサービスジャーナリスト。『月刊食堂』(柴田書店)、『飲食店経営』(商業界、当時)両方の編集長を務めた後、2014年7月に独立。フードサービス業界記者歴三十数年。フードサービス業界の歴史に詳しい。「フードフォーラム」の屋号を掲げて、取材・執筆・書籍プロデュース、セミナー活動を行う。著書に『外食入門』(日本食糧新聞社発行、2017年)。

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