ウクライナ侵略を巡る制裁の対応や国際会議の場で鮮明になりつつある、西側同盟諸国と中ロ連携諸国の対立構図。ここに来てプーチン大統領は軍事侵攻の総司令官に、かつてシリアで実績を上げた人物を新たに任命したと伝えられますが、今後この紛争はどのような展開となるのでしょうか。今回のメルマガ『国際戦略コラム有料版』では日本国際戦略問題研究所長の津田慶治さんが、心配される2つの懸念を指摘。さらに中国の台湾侵攻の前までに日本が済ませておくべき対応を記しています。
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西側対中ロの構図に。ロシアの国連人権理事会除名で分かること
ロシアはブチャでの民間人虐殺で国連人権理事会から除名された。中国は反対票を入れた。この投票行為で、西側と中ロの対立が明確化したことになる。今後を検討する。
ウクライナのブチャでロシア軍が民間人を大量虐殺したこと分かり、国連人権理事会のロシア除名決議が賛成多数で除名になった。
中国やベトナムを含め、24ケ国が反対した。インド、ブラジルなどの棄権58。賛成は93ケ国であった。西側同盟諸国と中ロ連携諸国の対立がはっきりした。
また、NATO外相理事会に、日本や韓国、オーストラリア、ニュージーランドが参加して、拡大会議を行った。これは、NATOが拡大して西側諸国全体の集団的安全保障の枠組みに発展する可能性があることを示している。
NATOのストルテンベルグ事務総長も、日本について「地理的に互いに遠く離れていても、価値観や課題を共有していると全員が理解している」とした。その上で「強引さを増す中国がもたらす課題への対応などで、緊密に協力する必要がある」と訴えた。これにより、中ロを敵とした西側諸国の結束が増したことになる。
事実、NATOは昨年の首脳会議で「対中国」を新戦略の柱の一つに据えることに合意している。
NATOが次の国連のような組織になることが確定したとも見える。国連は残して、中ロとの交渉の場とするが、それとは別に西側諸国の安全保障会議を設けるようである。
それに対して、上海条約機構が中ロの安全保障会議になるのであろうが、その構成員であるインドは離脱することになりそうである。今回の反対票でも上海条約機構加盟国が多くを占めている。
バイデン米政権はインドに対し、ロシアに協力しないよう警告し、さらに米国は、インドがロシアとの「より明確な戦略的協力」に動いた場合、その結果は「深刻かつ長期的」なものになるとインド側に伝えたようだ。
これを受けて、インドのティルムルティ国連大使は会合で「ブチャでの民間人殺害はひどく心をかき乱すものだ。われわれはこのような殺害をはっきりと非難する」と明言。実態解明に向けた調査の実施も支持した。
というように、インドは西側の民主主義国家群に加わるようである。米国もインドへの軍備品の援助を行うと表明している。
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