元国税調査官が暴露。現役国税職員ら「給付金詐欺事件」その全貌と闇

 

国税関係者の逮捕者はすでに3人

持続化給付金の不正受給で逮捕された現役国税職員は、わかっているだけで2名います。これは2名が共謀したわけではなく、それぞれが別の事件です。今回の詐欺グループの事件以外にも、山梨県での持続化給付金詐欺事件があり、これは去年発覚しているのです。

山梨の事件というのは、2021年2月16日号でもご紹介していますが、2020年12月、甲府税務署の税務署員26歳が新型コロナウイルス対策の持続化給付金をだまし取
ったとして愛知県警に逮捕されたというものです。

この税務署員は、個人事業者をよそおって嘘の所得税確定申告書の控えなどを添付して給付金を申請し100万円をだまし取ったということです。そして押収したパソコンなどによると、ほかに数百件の給付金詐取に関わったと見られています。しかもこの税務署員は、大麻の栽培もしており、その件でも逮捕されています。

これらの事件は、いろんな意味で「現代社会の闇」を感じさせるものでした。

まず「持続化給付金」そのものに様々な欠陥があり、今回の犯罪はその欠陥を衝かれたものであること。そして、今回の事件は、これまでにない異質な要素があること。

犯罪の舞台となった「持続化給付金」について少し説明しましょう。

持続化給付金の欠陥

持続化給付金というのは、新型コロナの影響で売上が急に下がった事業者などが受けられる給付金です。最高200万円までもらえました。

この持続化給付金は国の事業でありながら、電通やパソナの事業共同体が受注するという、いわゆる「中抜き問題」が発覚した事業です。もとの計画からかなりずさんで、利権にまみれた事業ではありました。これらの持続化給付金の利権問題については、このメルマガの2020年6月16日号に書いております。

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持続化給付金の実際の業務を担当したのは、パソナなどの民間企業なのですが、これが初めから無理無理だったのです。民間企業は、全国の事業者の情報も持っておらず、調査権もありません。不正受給をしようと思えばいくらでもできるのです。

案の定、持続化給付金では大量の不正受給が発生しました。しかもその手口は、今まで事業をやってこなかった普通の会社員や大学生が、持続化給付金を申請するだけという驚くほど単純なものでした。逆に言えば持続化給付金は「普通の会社員や大学生が申請しても簡単に給付されてしまう」というような、ずさんな仕組みを持っていたのです。

その申請もそれほど難しいものではなく、添付書類も確定申告書の写し、売上帳の写しなどでよかったのです。詐欺を働いた国税職員の塚本容疑者の担当は、確定申告書の偽造だったとのことですが、これもそう難しいものではありません。確定申告書の用紙は、税務署にも置いてありますし、国税庁のサイトから打ち出すこともできます。その申告用紙に必要事項を書き込んで、税務署の受付印を押せばいいだけです。税務署の受付印も、ゴム印のような簡単なものなので、ちょっとパソコンをいじれば簡単に偽造できてしまうのです。

そして必要書類さえ揃っていれば、相手は民間企業なのでそれ以上のチェック機能はないに等しいのです。

この持続化給付金は、国の機関でやるべきだったのです。たとえば国税庁がこの業務を行っていれば、こんな杜撰なことには絶対にならなかったはずです。まず申請の時点で、事業を行っていたかどうかは簡単にチェックできます。またもし不正があっても、国税庁には全国に調査網があるため、少しでも不審な点があればその場で調査できるのです。

不正受給者の側も、窓口が国税庁であればそう簡単には「詐欺をしよう」とは思わないはずです。

詐欺事件に関与した国税職員たちも、もし国税庁がこの業務を行っていれば、絶対に手を出していないはずです。彼らは国税庁の調査能力を知っているので、詐欺などが簡単に通用しないことは十分に知っているのです。

逆に彼らは、国税庁が関与せず民間企業が業務を行うのであれば、チェックが甘くなるということもよく知っていたのです。民間企業がそう簡単に、事業者の詳細の確認などはできないことは、国税の職員であれば体感的に知っています。

だから我々国民は、詐欺事件の追及をしながらも、この事業自体の欠陥も、しっかり追及していかなければなりません。

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