また、ロ軍は、地対地の誘導ミサイルもなくなり、50年前の対艦ミサイルを地上攻撃に使用しているので、目標から400m以上も離れた商業施設を破壊した。
最近、ロ軍が民間施設ばかり攻撃しているのは意図的なものではなく、単に古いソ連製ミサイルを使っているので、精密攻撃ができないだけだとウ軍の将軍は分析している。
この攻撃は、G7サミットで西側がロシアへの対抗の意志を示したことで、久しぶりにキーウへのミサイル攻撃もしたが、ウ軍も、このミサイルを撃ち落せていない。
この防御のために、ドイツ製防空システム「IRIS-T SLM」を供与するが、この最新鋭の防空システムでも、短距離弾道ミサイルしか撃ち落せない。そして、有効射程も短距離級と中距離級の中間くらいまでである。供与予定のアメリカ/ノルウェー製防空システム「NASAMS」も短距離級のものである。
ウ軍が欲しいのは、アメリカ製パトリオットPAC-3であるが、機密性が高く供与はしないはず。
ウクライナ戦争とは、ウ軍の少し前の近代兵器対ロ軍の旧ソ連時代の兵器の戦いでもあるが、旧ソ連の物量対知能的な少数の近代兵器の戦いとも言える。
また、ウ軍の戦車の消耗も激しいが、旧ソ連戦車が東欧諸国でもなくなり、ウクライナに供与できないので、旧式のNATO型戦車も供与するとNATO首脳会合で米バイデン大統領は表明した。その表明した供与する兵器とは、
- 14万発の対戦車ミサイル(疑問符:数が多すぎ)
- 600台以上の戦車
- ほぼ500台の野戦砲
- 60万発の砲弾
- 高度な多連装ロケット
- 地対艦ミサイル
- 地対空ミサイル「NASAMS」
であり、8億ドルの大規模な武器の供与となる。その上、「われわれはウクライナをいつまでも支援していく」と語った。これでウ軍の反撃を支えることになる。これに対して、ロシア軍は、シベリアの部隊の多くを動員したことで、追加の援軍がないことになる。
しかし、供与リストの中にMQ-1ドローンや欧米戦闘機がないのは残念であるが、機密性が高く供与はしないのであろう。
TB2があるのでMQ-1がなくても、徐々に形勢はウ軍有利になる。英国のウ軍兵士訓練が順調に行けば、今年の秋から冬にはロ軍は敗退する可能性が高い。
もう1つ、中欧・東欧の諸国は、ウクライナに積極的に旧ソ連製兵器を供与したことで、近代的な欧米製兵器になり、NATO軍の装備が標準化したことで、今後の部隊運用が楽になっている。ウ軍もソ連製兵器の消耗が激しく、次からの供与される兵器は徐々に欧米兵器になるので、NATO軍との連携性が高くなる。しかし、訓練時間は長くなるので、実戦配備に時間かかることになる。
6月30日閉幕したNATO会議では、今後の防衛・安全保障で新たに中国への懸念も示した「戦略概念」を採択し、ウクライナ侵攻を続けるロシアを「直接の脅威」と位置づけ、フィンランド・スウェーデンのNATO加盟にも合意した。
2023年以降、危機時に対応する即応部隊を30万人以上に増強するし、バイデン大統領は、ロシアの脅威に対抗するため、ポーランドに常設の陸軍司令部を新設し、陸海空の部隊を欧州全域に追加配備するとした。
このようなNATO会議を受けて、ロシアのラブロフ外相は、ロシアと西側諸国の間に新たな「鉄のカーテン」が下りてきているとした。
NATO会議の前に開かれたG7では、中国の「不透明で市場をゆがめる」貿易慣行を非難するとともに、同国への「戦略的依存」を減らしていくと声明を出した。中ロへの経済的な依存を減らして、同盟国内部で補完するということである。
中ロとの新たな「鉄のカーテン」が下りてきているのであろう。
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