TikTokも危険?10億人分のデータ流出の中国で何が起きているのか

 

冒頭の「自由時報」は、今回の事件は、習近平国家主席の政敵である江沢民・曾慶紅派の拠点である上海で、しかも秋に共産党大会を控えた微妙な時期に起きたことから、共産党内の内紛があった可能性も指摘されていると報じています。

公安のイントラネットは一般のインターネットから物理的に隔離されているはずで、「内部の仕業」の可能性は非常に高いといいます。

ラジオ・フリー・アジアは、事件の内情をある程度知っている、インターネット上で話題の「常氏」という人物が記者団に語った言葉を引用しました。それによると、常氏はこの事件について「おそらく昨年流出したものだが、現在は販売されている。昨年、収賄事件で失脚した、上海公安局長の龚道安氏への捜査が関連している可能性がある」と語っています。

常氏によれば、情報はアリババ傘下のアリ・クラウドに保存していましたが、セキュリティ上の欠陥から流出した可能性があるとのこと。龚道安はテンセントのシステムを使っていないアリ・クラウドのほうが優れている、と考えていたようです。

龚道安は、江沢民派の幹部で政治局常務委員を務めた孟建柱の側近と言われています。龚道安の失脚は、習近平政権が次に孟建柱を標的にしていることの前段だと噂されています。

もともと上海人は別格で、中国では嫌われてきました。よく「北京人愛国、上海人出国、広東人売国、香港人無国」といわれますが、上海人は一家一族を連れて海外に脱出したがり、たいていはアメリカを目指そうとします。

そのような上海は、長らく江沢民派の上海閥が牛耳ってきました。新型コロナで中国政府が上海をロックダウンした背景には、習近平政権が上海閥の再起を潰すためだとも言われています。上海をめぐって権力闘争が起こっており、今回のハッキングも、それが関係していると言われているのです。

ただ、ハッキングは習近平側の上海閥潰しの一環なのか、はたまた上海閥側が中央政府に揺さぶりをかける意味で行ったのかは判然としません。中国の権力闘争は複雑怪奇です。

一方、多くのネットユーザーは、ハッキングされたデータがこれほど大規模にもかかわらず、2,600万円程度で売られるのは安すぎると感じ、実際にはデータ漏洩は嘘なのではないかと疑う人もているようです。

ただし、中国人の個人情報など、よほど要人でないかぎり、それほど有用なものではありません。とりわけ、人権がほとんど尊重されない中国では、たとえ個人情報を持っていても、あまり意味がないのです。犯罪歴などが重要になるのは公安などの国家側のほうであり、一般では、そうしたデータをほしいと思う者はあまりいないでしょう。

以前のメルマガでも指摘したように、いま中国はハッカーの標的になっており、また、他国政府をハッキングするために中国政府が囲っているハッカー集団が暴走する可能性もあるのです。今回の事件を誰が起こしたのかははっきりしませんが、前述したように、政治の権力闘争が裏にあることも否めません。

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