2.被害者に年金を支払ったから、年金機構は加害者にその年金分の請求ができるが事務的には…
ところで、年金と損害賠償金の調整方法としては2つあります。1つ目は「損害賠償請求権の代位取得」と呼ばれるものです。
事故が第三者のせいで起こった場合に年金機構が年金を支払ったら、その支払った年金の限度で加害者側に対して遺族年金受給者が持っている損害賠償請求権を取得するという事です。
条文としては、「政府は事故が第三者の行為によって生じた場合において保険給付をした時は、その給付の価額の限度で、受給権者が第三者に対して有する損害賠償の請求権を取得する」という損害賠償請求権の代位取得を規定しています。
つまり、年金受給権者Aさんが加害者に「おい!損害賠償しろ!」という損害賠償請求権を、年金機構がそのAさんの権利を代わりに取得して加害者側に、「Aさんにこの間年金を払ったから年金機構に年金のお金返せ!」って言えるわけですね。
しかし年金においてはこの代位取得は行われていません。
なぜかというと、年金を支払うたびに加害者に「この間の偶数月に年金を支払ったから、その分返してね」って毎回毎回言わないといけないからです(求償という)。
示談が終わるまで、ずーっとそんな面倒で事務的にも手間とコストがかかるような事をやるので代位取得は全く年金機構ではやっていません。
3.損害賠償まで待てないから、さっさと被害者に年金を支払う。でも後で年金は返さなければならない。
次に、2つ目は「保険給付の免責」という方法があります。
年金機構は損害賠償の限度で年金を支払わない事が出来るという事ですね。
ただし、実際は先に一旦年金を支給してその後に損害賠償を受けたら、損害賠償金の範囲で年金を支払わない流れになっています。
(『事例と仕組みから学ぶ公的年金講座』2022年7月27日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)
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