コロナに続く災厄。日本にも入り込んだ「サル痘(エムポックス)」の危険度と今後

 

なぜ、感染が拡大しているのか リスの食用が原因?

なぜサル痘の感染がここまで拡大しているのかは、現在のところ分かっていない。ただ、確実にではあるが、感染地域の拡大は起きている。

従来感染がなかった地域での感染例はここ1カ月で1,000例を超えた。範囲は欧州を中心に、南北アメリカ大陸やアジア、オセアニア地域に広がる。

しかも、潜在的な感染者も含めると、すでに多くの感染者が存在している可能性もある(*3)。

サル痘は、天然痘と比較されることもある。ビル・ゲイツもサル痘について言及していた。

サル痘の感染者がアフリカで広まっていた背景はよくわかっていないものの、ナイジェリアの研究グループは次の3つの要因を論文で取り上げている。

第一に、天然痘ワクチンの接種を受けていない人が増えていったこと。天然痘そのものは、紀元前から人類の命を脅かす感染症であったが、しかし19世紀の終わりから開発された種痘により、予防が可能な病気となった。

そして1977年の発生を最後に感染者がいなくなり、1980年代にWHOは天然痘の根絶を宣言、結果、予防接種も行われなくなった。

そのため、ワクチンを接種していない40代より下の世代の人に対し、サル痘が広がりやすくなった。

第二に、「ブッシュミート」の食用利用が広がったことも理由のひとつであるという。ブッシュミートとは、森林地帯の野生動物の肉を食用利用すること。

サル痘のウイルスはリスが持っていることが分かっているが、コンゴ民主共和国では10代の患者ががリスを食べたことがあると答えている。

経済的な困窮を背景に、リスが身近な食肉となり、サル痘の感染拡大との因果関係が懸念されている。

第三に、そもそも医療施設のインフラが整っていないこと。サル痘の原因となるポックスウイルスは乾燥に強く、体液の付いた寝具から感染すると考えられている。

そのため、感染者を収容する医療施設の衛生状態が悪いため、サル痘の蔓延が起こりやすいという指摘もある。

WHOの感染症疫学者マリア・バン・ケルクホーブ氏は、5月23日のオンライン公開質問会で、

「今回の症例では(サル痘の)感染は、本当に密接な身体接触、つまり皮膚と皮膚との接触で起きています。それは新型コロナとある意味、大きく違います」(ナショナル・ジオグラフィック、5月30日)

と答え、

「これは封じ込められる状況です」(ナショナル・ジオグラフィック、5月30日)

と言う。

「感染者に投与する抗ウイルス薬候補も、感染リスクの高い人々、つまり感染者との濃厚接触者に投与するワクチンもあります。ワクチンは全員に必要なものではありません」(ナショナル・ジオグラフィック、5月30日)

とした。

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