コロナに続く災厄。日本にも入り込んだ「サル痘(エムポックス)」の危険度と今後

 

今後の動向 求められるワクチン接種と特効薬

WHOは症状が出ている人は検査を受け、他の人との密接な接触を避けて、医療機関にかかるよう呼びかけている。

一方、ECDCは「可能性は非常に低い」としたうえで、ヒトからヒトへの感染が続けば、ヒトからいずれ動物に感染、動物の間でも広がり、今後、欧州に定着する可能性を指摘している。

WHOでシニアアドバイザーを務める進藤奈邦子さんは、今月18日に横浜市で開かれた学会でNHKの取材に応じ、

「これまで分かっている範囲では、感染の広がりのほとんどは男性どうしで性的な接触を行った人たちの中にとどまっているが、感染のすそ野がどれだけ広がっているのか全くわかっていない。

ただ、新型コロナウイルスのようには広がるものではない。直接の身体の接触が主な感染経路となり、講演会の会場のような場所で広がるようなことはない」(NHK NEWS WEB、6月21日)

とする。

サル痘に対しては、天然痘のワクチンが高い効果があり、WHOによると感染を防ぐ効果は85%に達するという。

ただ、天然痘はワクチン接種が日本国内で最後に接種が行われたのは1976年で、そのときに子どもだった、いまの40代後半以上の世代は接種を受けており、サル痘に対する免疫がある可能性があるものの、それより下の世代は免疫を持っていない。

日本にある天然痘のワクチンは、効果が高く、副反応も小さいとされ、テロ対策の一環として国家備蓄されている。

サル痘に対する薬の開発は、一応は進められているが、いまのところ特効薬のような治療はなく、各国では対症療法で対応している。

欧米では、サル痘の感染対策として新たに天然痘のワクチンを購入する動きが相次いでいる。カナダなど一部の国では医療従事者や、患者と接触した人などへの接種がすでに始まっている。

しかし、患者と接触していても、ワクチンの接種を希望する人が少ないことも課題になりつつあるという。

イギリスの保健当局が6月2日に公表した報告書では、ワクチンの接種の希望を聞かれた医療従事者の69%が接種を希望したのに対し、患者と接触した人では14%しかワクチンの接種を希望しなかった。

しかし報告書では、

「根絶という目標を達成するためには、患者の迅速な発見や感染経路の追跡が必要不可欠だ。定期的な検査などワクチン以外の対策についても検討すべきだ」(NHK NEWS WEB、6月21日)

とする。

引用・参考文献

(*1)「サル痘 WHO 専門家緊急委で検討 『緊急事態』か数日以内に判断」NHK NEWS WEB 2022年6月23日

(*2)「サル痘 『国際的な緊急事態』か注視 わかってきたこと 6/21」NHK NEWS WEB 2022年6月21日

(*3)星良孝「なぜ今サル痘?人口大国ナイジェリアでの39年ぶりの流行勃発が示唆する未来」JBpress 2022年6月11日

● 「サル痘について今わかっていること、感染経路や治療薬、歴史など」ナショナル・ジオグラフィック 2022年5月30日

(『モリの新しい社会をデザインする ニュースレター(有料版)』2022年6月26日号より一部抜粋・敬称略)

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伊東 森(いとう・しん): ジャーナリスト。物書き歴11年。精神疾患歴23年。「新しい社会をデザインする」をテーマに情報発信。 1984年1月28日生まれ。幼少期を福岡県三潴郡大木町で過ごす。小学校時代から、福岡県大川市に居住。高校時代から、福岡市へ転居。 高校時代から、うつ病を発症。うつ病のなか、高校、予備校を経て東洋大学社会学部社会学科へ2006年に入学。2010年卒業。その後、病気療養をしつつ、様々なWEB記事を執筆。大学時代の専攻は、メディア学、スポーツ社会学。2021年より、ジャーナリストとして本格的に活動。

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